2011/3/28

環境・通信・その他

欧州議員が汚職疑惑で辞職、ロビー活動のあり方問われる

この記事の要約

英『サンデー・タイムズ』紙の汚職報道をきっかけに、EUでロビー活動のあり方をめぐる問題がにわかに注目を集めている。おとり取材で欧州議会の現役議員3人が取引に応じたと報道されたもので、うち2人が21日までに辞職した。欧州議 […]

英『サンデー・タイムズ』紙の汚職報道をきっかけに、EUでロビー活動のあり方をめぐる問題がにわかに注目を集めている。おとり取材で欧州議会の現役議員3人が取引に応じたと報道されたもので、うち2人が21日までに辞職した。欧州議会で汚職防止政策を担当するダイアナ・ワリス副議長は20日、ただちに調査を開始して徹底解明を目指すとともに、ロビー活動の取締り強化を図る立場を表明した。

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リスボン条約により欧州議会の権限が強まったことで、議員に対するロビー活動が盛んになっているようだ。ワリス副議長は、「EUは欧州委員および欧州議員と接触するロビー活動家の登録名簿を一本化するなど、多くの加盟国に比べて透明性の高い制度を確立している」と指摘。一方で、任意制のために罰則がなく、取り締まりが困難との認識を明らかにし、「欧州議会はこれまでも名簿登録の義務化を要求してきた。今回の報道を機に、議会の訴えに真剣に耳を傾ける人が増えるかもしれない」と期待感を示している。

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『サンデー・タイムズ』紙は昨年、銀行業界のロビー活動家と偽って60人を超える欧州議員に面会。欧州銀行指令の修正手続きで投資銀行の利益を代弁するよう要請し、その報酬として10万ユーロを提示した。これに対し、オーストリアのエルンスト・シュトラッサー元内相、スロベニアのゾラン・ターラー元外相、ルーマニアのアドリアン・セヴェリン元副首相の3議員が取引に応じた様子を、隠しビデオでとらえた。

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3議員はいずれも汚職の事実を否定しているが、シュトラッサー氏は20日、所属するオーストリア国民党(OeVP)のヨーゼフ・プレル党首の圧力で辞職を決めた。ターラー氏も欧州議会のブゼク議長の要求を受け、翌21日に職を辞した。議員は訴追免除の特権を有するが、辞職によってこれが失効し、刑事訴追が可能となる。一方、セヴェリン氏は欧州議会会派の社会民主進歩同盟(S&D)から離脱を余儀なくされたが、ブゼク議長の辞職要求を拒否している。

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EU不正対策局(OLAF)のジョバンニ・ケスラー局長は22日、迅速に審理手続きを進める方針を表明した。英『フィナンシャル・タイムズ』紙によると、シュトラッサー氏の議員事務所を捜索する予定という。

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