2012/7/30

総合 –EUウオッチャー

セルビアで新政権発足、EU加盟が最優先課題に

この記事の要約

セルビア議会は27日、5月の議会選で第1党になった中道右派のセルビア進歩党を中心とする連立内閣を承認し、新政権が発足した。新首相には第3党の中道左派、セルビア社会党のダチッチ党首が就任した。セルビアは今年3月にEU加盟国 […]

セルビア議会は27日、5月の議会選で第1党になった中道右派のセルビア進歩党を中心とする連立内閣を承認し、新政権が発足した。新首相には第3党の中道左派、セルビア社会党のダチッチ党首が就任した。セルビアは今年3月にEU加盟国候補となっており、ダチッチ首相は早期加盟に向けて積極的に取り組む方針を示している。

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セルビアでは2008年以来、今回の選挙で第2党になった親欧米の民主党が社会党と連立政権を組み、EU加盟を目指してきた。新政権も引き続きEU加盟を推進することになるが、EU側は08年にセルビアからの独立を宣言したコソボとの関係改善を加盟交渉開始の条件としている。ダチッチ首相は「コソボの独立を承認することはできない」と明言する一方、EUの仲介で昨年3月にスタートした対話を通じて問題解決を図る姿勢を強調。「前提条件をつけずに」交渉を継続する用意があると述べた。

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一方、セルビアでは財政赤字が国内総生産(GDP)比7.3%に達するとみられており、ディンキッチ財務相は9月に大幅な歳出削減を柱とする財政再建計画をまとめる方針を示している。前政権は12年の経済成長率を1.5%と予測していたが、国際通貨基金(IMF)は0.5%にとどまるとみている。また、セルビアでは失業率が約25%に上り、欧州で最も高い水準となっている。

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新首相のダチッチ氏は旧ユーゴ紛争の戦犯として逮捕された故ミロシェビッチ元ユーゴ大統領の側近の1人で、1990年代には同氏が率いる社会党の報道官を務めた経緯がある。一方、5月に大統領に就任した進歩党の前党首ニコリッチ氏もミロシェビッチ政権で副首相を務めた経歴を持ち、「セルビア人勢力によるスレブレニツァ(ボスニア東部の町)でのジェノサイド(大量虐殺)はなかった」と発言したことが批判の的になっている。ダチッチ首相は「セルビアはあらゆる問題を平和的に解決し、周辺地域に平和と安定をもたらすカギになりたいと考えている」と述べ、対話を通じて周辺国との融和を進めたい考えを強調した。

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