2013/3/4

総合 –EUウオッチャー

イタリア総選挙で緊縮派が失速、信用不安再燃の危機

この記事の要約

イタリアで24、25日に実施された総選挙で、モンティ政権の財政緊縮・構造改革路線に反対する勢力が躍進し、下院は財政緊縮の継続を掲げる中道左派連合が過半数の議席を確保したものの、上院では過半数に達した陣営がなかった。安定し […]

イタリアで24、25日に実施された総選挙で、モンティ政権の財政緊縮・構造改革路線に反対する勢力が躍進し、下院は財政緊縮の継続を掲げる中道左派連合が過半数の議席を確保したものの、上院では過半数に達した陣営がなかった。安定した政権の発足が望めない状況で、収まりつつあった信用不安が再燃する懸念が強まっている。

\

下院(定数630)の得票率は中道左派連合が29.54%でトップ。緊縮路線に反対するベルルスコーニ元首相率いる中道右派連合の29.18%と僅差だが、第1勢力にはボーナス議席が与えられることから、過半数を超える345議席を獲得した。中道左派は125議席。また、既成の政治を批判するコメディアンのベッペ・グリッロ氏が立ち上げた「五つ星運動」の得票が25.5%と、単独の政党では最大となり、109議席を獲得して第3勢力に躍り出た。モンティ氏が率いる中道勢力の政党連合は47議席にとどまった。

\

上院(定数315)の獲得議席は中道左派123議席、中道右派117議席、五つ星運動54議席、モンティ氏の連合19議席。中道左派は第1勢力となったが、モンティ氏の連合と合わせても過半数に届かなかった。

\

前任者であるベルルスコーニ氏が信用不安対策での失政、スキャンダルで失脚したことを受けて2011年11月に首相に就任したモンティ氏は、各界の専門家を集めた実務派内閣を組織して財政再建を推進。これによってイタリアの信用不安は大きく改善し、その手腕はEUなど国際社会から高く評価されている。しかし、厳しい緊縮策に反発する中道右派が政権への支持を撤回し、政権運営が困難となったことから内閣総辞職に追い込まれた。

\

総選挙では当初、モンティ政権の財政緊縮・構造改革路線を一部修正しながらも、大枠で継承する方針を掲げる中道左派連合が有利と見られたが、不動産税の還付など「ばらまき」政策を前面に打ち出したベルルスコーニ氏の中道右派が緊縮策に反発する世論の支持を集め、予想外の躍進を果たした。五つ星運動も無党派層の受け皿となり、一気に主要勢力にのし上がった。

\

イタリアでは上院が下院とほぼ同等の権限を持つことから、新政権の発足には上下両院の承認が必要となる。このため、第1勢力の中道左派を軸とする連立工作が今後の焦点となる。

\

中道左派と中道右派の大連立は、両党が緊縮策をめぐって真っ向から対立していることから可能性は薄い。ベルルスコーニ氏は大連立に含みを残しているが、中道左派の中核である民主党のベルサーニ書記長は明確に否定している。

\

最も現実的な組み合わせは中道左派と五つ星運動の連立だが、グリッロ氏は既存政党とは組まないと明言している。また、仮に両勢力の連立政権が発足したとしても、立場の違いから安定した政権運営は難しい。このため、再選挙の可能性も取りざたされている。

\

イタリアはユーロ圏3位の経済国だけに、政局の混迷が長引いて信用不安が再燃すると、債務危機から完全に脱却していないユーロ圏全体に影響が広がる恐れがあり、当面は目を離せない状況が続きそうだ。

\