2013/3/18

環境・通信・その他

航空旅客の権利ルールを改正へ、免責要件の明文化など

この記事の要約

欧州委員会は13日、航空便の欠航や遅延の影響を受けた乗客に対する補償を定めた「航空旅客の権利に関する規則」の改正案を発表した。2004年に制定された同規則には不明瞭な点が多く、解釈の違いから航空会社によって対応が異なると […]

欧州委員会は13日、航空便の欠航や遅延の影響を受けた乗客に対する補償を定めた「航空旅客の権利に関する規則」の改正案を発表した。2004年に制定された同規則には不明瞭な点が多く、解釈の違いから航空会社によって対応が異なるといった問題が生じてしばしば訴訟に発展している。欧州委はこうした現状を踏まえ、運用上のルールを明確にすることが旅客の権利強化につながるとの立場から規則の見直しを進めていた。

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現行規則は旅客が被る可能性のあるトラブルをオーバーブッキングによる搭乗拒否、運航キャンセル、遅延の3つに分類し、目的地までの距離などに応じて補償される権利を規定している。しかし、金銭的補償が免除される「異常な事態」の定義や、宿泊・食事などのケアを提供しなければならない範囲・期間などをめぐって解釈が統一されておらず、航空会社や消費者団体などの間でルールの明確化を求める声が高まっていた。

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欧州委のカラス副委員長(運輸担当)は「旅客の権利を保障することは極めて重要だが、トラブルに見舞われた際の優先順位はできる限り速やかに目的地にたどり着くための手段を確保することだ」と強調。補償ルールが適切に運用されるよう「グレーゾーン」をなくす必要があると指摘し、足止めされた乗客へのケアと代替輸送に重点を置いて現行ルールの見直しを行ったと説明している。

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現行ルールは運航キャンセルについて、自然災害などの異常な事態を理由とする場合や航空会社が2週間以上前に欠航を通知した場合を除き、代替便(到着時間の遅れが4時間以内)を用意しない限り、オーバーブッキングによる搭乗拒否と同様、運賃の全額返金に加えて飛行距離に応じて最大600ユーロの補償金を支払うよう航空会社に義務づけている。欧州委は改定案で「異常な事態」を「航空会社の業務の範囲を越えた領域におけるコントロール不能な状況」と定義。具体例として、予測不可能な自然災害や航空管制官のストライキなどは免責の要件として認められるのに対し、飛行前の点検で発覚した技術面のトラブルなどは該当しないと説明している。

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一方、航空会社は搭乗拒否や運航キャンセル、さらに遅延で空港に足止めされた乗客に対し、必要に応じて食事や宿泊所を提供することが義務づけられているが、欧州委は乗客が請求できる宿泊代を最大3日まですることを提案している。また、発着時間の遅延に関しては、運賃の払い戻しや食事・宿泊などのケアを受けられる条件を引き上げ、EU域内を結ぶ便と飛行距離が3,500キロメートルまでの国際線は5時間以上、6,000キロメートルまでは9時間以上、6,000キロメートル以上は12時間以上の遅れが生じた場合に限るとしている。現行ルールでは、域内便と飛行距離が3,500キロメートルまでの国際線では3時間以上の遅れで航空会社に補償義務が発生する仕組みになっている。欧州委は遅延ルールの変更について、できるだけ欠航を減らすことが最大の目的と強調。たとえば技術的なトラブルが生じた場合でも機体を変更するなどして欠航を回避できるよう、航空会社に時間的な余裕を与えることが最終的には消費者の利益につながると説明している。

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補償ルールの解釈をめぐる議論が本格化したのは、2010年4月にアイスランドで火山が噴火し、6日間にわたり欧州の主要空港がほぼすべて閉鎖されて10万便以上が欠航したことが直接のきっかけ。ほとんどの航空会社は現行ルールに基づいて旅客からの補償請求に応じたが、宿泊などのケアをどこまで提供すべきかについては明記されていないため、各社の対応にばらつきが出た。たとえばアイルランドの格安航空会社ライアンエアーは運賃を払い戻しただけで、宿泊費や食事代の請求にはほとんど応じなかった。旅行先のポルトガルで5日間足止めされ、アイルランドへの帰国が予定より7日間遅れた女性客の訴えについて、EU司法裁判所は今年1月、たとえ火山噴火のような非常事態で欠航を余儀なくされた場合でも、補償義務が免除される「特別な例外的状況」は存在しないと指摘。すべての航空会社は運航再開まで乗客の宿泊や食事を確保しなければならないとの見解を示し、ライアンエアーに対して原告に1,330ユーロを支払うよう命じている。

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