欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/12/14

EU情報

クアルコムに異議告知書、携帯向け半導体の競争阻害で

この記事の要約

欧州委員会は8日、米移動体通信向け半導体大手クアルコムが携帯端末向け半導体チップの販売でEU競争法に違反した疑いがあるとして、同社に異議告知書を送付したと発表した。クアルコムには反論の機会が与えられるが、最終的に欧州委が […]

欧州委員会は8日、米移動体通信向け半導体大手クアルコムが携帯端末向け半導体チップの販売でEU競争法に違反した疑いがあるとして、同社に異議告知書を送付したと発表した。クアルコムには反論の機会が与えられるが、最終的に欧州委が競争法違反と判断した場合、年間売上高の最大10%に相当する制裁金を科される可能性がある

欧州委が問題視しているのは、スマートフォンやタブレット端末などの無線通信や信号を制御する「ベースバンドチップ」と呼ばれる半導体の販売戦略。クアルコムは同分野で最大シェアを誇る。同委はこれまでの調査から、クアルコムは同社製チップセットのみを採用する見返りとして、スマートフォンとタブレット端末を製造する大手メーカー1社(具体名は明かさず)に対して2011年以降、「莫大な額」のリベートを支払ったと指摘。クアルコムとこの大手メーカーの契約には現在もこうした「排他的取引」に関する条項が含まれており、ベースバンドチップ市場における公正な競争とイノベーションを妨げているとの見方を強めている。

一方、クアルコムは携帯端末向け半導体で急速にシェアを拡大しつつあった英アイセラ(2011年に米エヌビディアが買収)を市場から排除するため、09-11年にかけて一部のベースバンドチップ製品を対象に、コストを下回る価格で提供する「略奪的価格設定」を行ったとされる。

クアルコムはメーカーとの排他的取引については3カ月以内、略奪的価格設定については4カ月以内に回答する必要がある。

欧州委のヴェスタエアー委員(競争政策担当)は「ベースバンドチップは多くの消費者が利用している高速モバイルインターネットを支える基盤であり、クアルコムの商慣行はこうした重要な分野で公正な競争を妨げたとの懸念を抱いている」と指摘した。一方、クアルコムのドン・ローゼンバーグ上級副社長(法務担当)は「無線通信用チップの販売に関していかに激しい競争が展開されているかを明らかにし、当社が常にEU競争法を順守していることを証明したい」とコメントしている。