欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/6/9

EU産業・貿易

カナダ産オイルサンド由来の原油輸入に道、欧州委が燃料品質指令のルール緩和

この記事の要約

輸送部門における温室効果ガス削減目標を定めたEUの「燃料品質指令」に関連して、欧州委員会がオイルサンド由来の燃料に対する規制を大幅に緩和するルールを検討しているもようだ。英フィナンシャル・タイムズ(FT)が5日、欧州議会 […]

輸送部門における温室効果ガス削減目標を定めたEUの「燃料品質指令」に関連して、欧州委員会がオイルサンド由来の燃料に対する規制を大幅に緩和するルールを検討しているもようだ。英フィナンシャル・タイムズ(FT)が5日、欧州議会議員などの話をもとに報じた。ウクライナ情勢を背景に、EUはエネルギーの安定確保に向けて調達先や調達ルートの多様化を急ぐ必要に迫られており、カナダから通常の原油より二酸化炭素(CO2)排出量が多いオイルサンド由来の重質原油を輸入できるようにするのが狙いという。

オイルサンドは流動性のない高粘度の重質油を含む砂および砂質岩で、オイルサンド由来の原油は通常の原油と比べてCO2排出量が20%以上も多いとされる。EUは2009年、域内の燃料供給事業者に対し、20年までに燃料製品の温室効果ガス排出量をライフサイクル全体で6%削減することを義務づけた燃料品質指令を採択。欧州委員会は同指令の実施に向けた具体策の中で、燃料供給事業者がCO2排出量の多い燃料を識別するためのリストにオイルサンドを加えることを提案している。これに対し、世界3位の原油埋蔵量を持つカナダはオイルサンドが大半を占めるため、EUに対する反発を強めている。

FT紙によると、欧州委内部ではウクライナ情勢を受けてエネルギー資源の調達先を多様化するため、カナダ産の原油を含む北米からの輸入を拡大する必要があるとの意見が大勢を占めるようになり、月内にも発表される新たな法案にはオイルサンドに対する規制を緩和する内容の修正が加えられたという。同紙は欧州議会環境委員会の委員を務めるクリス・デイビス議員の「欧州委のヘデゴー委員(気候変動担当)は産業担当や通商担当委員らの意見に屈した」との発言を引用している。

同紙によると、修正後のルールでは、燃料供給事業者は原料の温室効果ガス排出量を報告する義務を負うものの、削減幅は原料に関係なく最終的な燃料製品の排出量を基準に算出される。このため、生産過程で大量のCO2を排出するサンドオイル由来のガソリンやディーゼルなども、通常の原油から生産される燃料と同等の扱いとなり、カナダ産原油が大量に輸入されることになるという。

欧州委は報道に対してコメントを控えている。