欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/6/9

EUその他

カルテル参加企業に自社顧客以外にも損害賠償責任、欧州裁が画期的判決

この記事の要約

欧州司法裁判所は5日、企業間のカルテルが原因で業界全体の価格水準が上昇した結果、協定に参加していない企業が値上げに踏み切った場合、その企業の顧客は協定参加企業に損害賠償を請求できるとの判断を示した。違法な協定に関与した企 […]

欧州司法裁判所は5日、企業間のカルテルが原因で業界全体の価格水準が上昇した結果、協定に参加していない企業が値上げに踏み切った場合、その企業の顧客は協定参加企業に損害賠償を請求できるとの判断を示した。違法な協定に関与した企業は、協定外の企業の顧客に対しても損害賠償責任を負うとした画期的な判決で、銀行間の指標金利をめぐる談合に関連した訴訟などに影響が及ぶ可能性もある。

今回の判決は、オーストリア国鉄(ÖBB)の子会社ÖBBインフラストラクチャーがエレベーターとエスカレーターの購入に関連して、同国で価格協定や市場分割などの不正行為を行っていた米オーティスや仏シュナイダーなどの大手メーカーに対し、総額180万ユーロの損害賠償を求めた訴訟に対するもの。ÖBBとカルテル参加企業の間に直接の取引関係はなかったが、同社はカルテルの影響で発注先が値上げを余儀なくされ、その結果、多額の損失が生じたと主張していた。オーストリアの法律ではこうしたケースで協定参加企業に損害賠償を請求することはできないため、最高裁判所がEU競争法との関連で司法裁に判断を求めていた。

欧州裁は判決で「カルテル行為と原告が主張する損失の間に因果関係が存在する場合、誰にでも損害賠償を請求する権利がある」と指摘。不正な企業間の取り決めが価格上昇などの不利益をもたらした場合、原告と協定参加企業の間に契約関係が存在したかどうかにかかわらず、企業側は損害賠償の責任を負わなければならないと結論づけた。

ブリュッセルの大手法律事務所ホワイト&ケースのパートナー、アクセル・シュルツ氏は「判決自体は極めて論理的な内容だが、EUでこうした司法判断が示されたのは画期的」とコメント。今後はカルテルに関与した企業が、自社の顧客以外から損害賠償を請求されるケースが急増するとの見方を示している。