2014/7/16

総合・マクロ

スロベニア議会選、新党が大勝

この記事の要約

スロベニアで13日、議会選挙(定数90)が前倒しで実施され、初めて政界入りしたミロ・ツェラル氏(50)が率いる中道左派の新党「ミロ・ツェラル党(SMC)」が大差で勝利した。汚職まみれの政治に失望した有権者が、ツェラル氏の […]

スロベニアで13日、議会選挙(定数90)が前倒しで実施され、初めて政界入りしたミロ・ツェラル氏(50)が率いる中道左派の新党「ミロ・ツェラル党(SMC)」が大差で勝利した。汚職まみれの政治に失望した有権者が、ツェラル氏の「モラル回復」の訴えに呼応したもようだ。SMCは民主党(SDS)を除く全ての政党と連立する用意があるとしており、早期に各党との協議に入る。組閣は早くて9月中旬となる見通し。

中央選管が開票率99.9%時点で発表した速報によると、SMCは34.6%を得票して36議席を獲得する見通し。2位の民主党(SDS)は20.7%(21議席)。3位は年金生活者民主党(DeSUS)で、過去最高の10.2%を得た(10議席)。民主労働者党(DSD)、安定成長党(TRS)、民主社会主義イニシアチブ(IDS)の3党から成る左翼統一連合(DSD)は6%(6議席)、社会民主党(SD)は6%(6議席)、新スロヴェニア・キリスト教人民党(NSi)は5.5%(5議席)だった。前首相が新たに結成したアレンケ・ブラトゥシェク連合(ZAB)は事前予測に反して阻止条項をクリア。得票率4.3%で4議席を得る見通しだ。残り2議席は少数民族代表に割り当てられる。投票率は51%だった。

ツェラル氏は、オリンピック乗馬選手の父と地方検事の母を持つ著名な憲法学者。先月、SMCを結成し、汚職対策と民営化計画の見直しを公約に掲げて選挙を戦った。年内発表を目標に民営化計画を練り直す意向だ。

前内閣が欧州連合(EU)と合意した通り、国内総生産(GDP)に対する財政赤字の比率を来年までに3%以下に押し下げるとする一方で、スロベニアテレコムやスロベニア国際空港など、「国家戦略上、重要な資産」の売却には反対している。しかし、代替財源をどこに求めるのかは明らかにしていない。他方、緊縮財政の継続と労働市場改革の実施では前内閣の路線を踏襲する方針だ。

連立の可能性が高い政党としては、前政府にも参加していたDeSUSとSDの名が挙がっている。選挙速報を基にすると、3党合わせて52議席を確保できる計算だ。政策的には左派連合やブラトゥシェク連合も候補になりうる。いずれにしても、中道左派勢力が政権に就くのは間違いない情勢だが、痛みの伴う政策に国民の理解をどれだけ得られるか、難しいかじ取りを迫られそうだ。

■議会活動をボイコット=民主党

ヤンシャ党首が先月、汚職の罪で2年の懲役刑に処せられた民主党(SDS)は、最初の選挙速報が発表される以前の時点で、今回の選挙が「自由と公正」に反するものだとし、「選挙結果を認めない」姿勢を明らかにした。ヤンシャ党首の有罪判決が選挙妨害に当たるという主張だ。このため、◇議会での役職を引き受けない◇選出議員は基本的に会議に欠席する――など、議会活動をボイコットするという。

また、ブラトシェク前首相辞任のきっかけを作ったヤンコヴィッチ氏が率いる「積極的なスロベニア(PS)」は議席を得られなかった。前首相はPSの党首を務めていたが、4月の臨時党大会における信任投票で敗れて離党。連立政党もPSとの協力継続を拒否し、今回の前倒し選挙につながった。(東欧経済ニュース4月30日号「スロベニア首相が離党、前倒し選挙を検討」を参照)