2015/5/6

コーヒーブレイク

対独戦勝ルートをたどるライダーたち~ロシア

この記事の要約

欧州における第二次大戦終結から70周年を目前にして、ロシアのバイク集団「夜の狼」がベルリンに向かっている。自らを「平和の使者」とうたっているが、殴り合いの騒ぎを起こすことも珍しくない普段の動向から、本気でその意図を信じる […]

欧州における第二次大戦終結から70周年を目前にして、ロシアのバイク集団「夜の狼」がベルリンに向かっている。自らを「平和の使者」とうたっているが、殴り合いの騒ぎを起こすことも珍しくない普段の動向から、本気でその意図を信じる者は少ない。また、当時の赤軍がたどったルートを走るということで「ロシアによる欧州制服」を連想させるとして物議をかもしている。

「夜の狼」を率いるザルドスタノフさんは、プーチン大統領の友人と言われ、その政策の強力な支持者だ。「夜の狼」として、クリミア半島併合時に現地で支持集会を行ったり、ウクライナ東部のルハンスク州の親ロシア分離主義者を支持するパレードを組織したりているという。暴力沙汰を起こす危険もあることから「走行ルート」に含まれる国にとっては迷惑千万というところだ。

ポーランドとリトアニアはビザ取得要件を満たしていないことや、メンバーの安全確保が保証できないことを理由に、メンバーの入国を拒否した。ドイツもリーダーの入国は許さない方針だ。

しかし「夜の狼」はひるまない。ポーランド国境でストップがかかったメンバーは空路でワルシャワに入り、現地のシンパからバイクを借りてアウシュビッツ強制収容所を訪れた。ウィーンでは在墺ロシア大使とともに赤軍記念碑に花をささげた。チェコのブルノでもロシア外交官とソ連軍兵士の眠る墓地に足を向けた。

ロシア政府は欧州ビザ保有者の入国拒否が恣意的判断に基づくとして各国の担当省庁に正式に抗議した。「欧州の『反ロシア』思想の証し」と国内向けの宣伝にも余念がない。

同時にロシア・メディアは、「ナチス解放記念ツアー」を続ける「夜の狼」をヒーローとして報道。シンパ・野次馬から成る見物人を「ロシアと連帯する欧州人」として描き、大いにプロパガンダに利用している。

このため、欧州の中にも「あまり騒がないで走らせておくのが得策だったのでは」という声もある。ロシアに欧州批判の糧を与えるだけという理屈だ。しかし、クリミア半島併合で度肝を抜かれた欧州諸国としては、「事が起こってからでは遅い、用心に越したことはない」というところなのではないだろうか。