2015/10/7

コーヒーブレイク

フィクションドラマにおかんむり~ロシア

この記事の要約

ノルウェー制作の連続テレビドラマ「占領(Okkupert)」にロシアがおかんむりだ。在オスロ大使館は「冷戦時代の構図でまたも悪役にされた」と怒りのコメントを発表したが、さて、実態はどうなのだろう。 このドラマは「刑事ハリ […]

ノルウェー制作の連続テレビドラマ「占領(Okkupert)」にロシアがおかんむりだ。在オスロ大使館は「冷戦時代の構図でまたも悪役にされた」と怒りのコメントを発表したが、さて、実態はどうなのだろう。

このドラマは「刑事ハリー・ホーレ」シリーズで知られる推理小説作家ジョー・ネスボ氏が2008年に書いた原案に基づく。民放大手のTV2が9,000万クローネ(1,089万米ドル)という多額の制作費をつぎ込んだ。全10話で4日に第1話が放映されたばかりだ。

ドラマの設定は、「ノルウェーで急進環境政党が選挙に勝ち、油田・ガス田が閉鎖された。石油需要の11%、天然ガス需要の3分の1をノルウェーから輸入する欧州連合(EU)はロシアによる同国占領の容認を発表。ロシアはノルウェーと戦闘を交えることなく同国の資源生産施設を支配下に置く」というものだ。

ロシア側は「よりにもよって戦勝70周年という記念すべきこの年に、ドラマの制作者はソ連がノルウェー北部をナチスから解放するために払った英雄的な犠牲を忘れ、ありもしない『東方の脅威』を描いて視聴者の不安をかきたてようとしている」と批判した。

これに対してTV2は、「欧米とロシアの緊張が高まっている現状とは関係ない」とコメント。「このドラマは、EUがロシアの占領を公認し、米国は北大西洋条約機構(NATO)から撤退している設定」とし、「架空性」を強調した。

また、テーマはあくまでもノルウェー人と指摘。「占領」は戦闘を伴わず、ロシアは資源資産のみを制圧する。国民の日常は変わることなく続く。そのような状況で「ノルウェー人がどう反応するか」がテーマだと説明する。

その点では、フランス人作家ミシェル・ウエルベックが今年出版した『服従(Soumission)』と似ている。この小説では、イスラム政党が選挙に勝ったとしたら、フランスがその事実とどう対峙していくだろうか、というテーマが扱われた。

原案を書いたネスボ氏は昨年、あるインタビューで「北欧に暮らす人々は『今』の状況が保証され、ずっと続くと思っている。しかし、旧ユーゴスラビアではミロシェビッチがセルビア大統領に就任して半年で内戦になった。変わらないものなどない」と話し、今に安住することのリスクを指摘している。

ロシアの配役が適切かどうかはともかく、難民の大量流入に直面する欧州にとっては時機にかなったテーマかもしれない。娯楽性だけでない北欧らしい硬派ドラマ。外国の放送局も放映権を購入しているというから、欧州に住む人には視聴の機会があるかもしれない。

ルーマニア・ブルガリア・その他南東欧・トルコ
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