2011/9/12

総合 –EUウオッチャー

ECBが国債買い入れ拡大、金融市場の動揺続く

この記事の要約

欧州中央銀行(ECB)は5日、前週に流通市場で総額133億ユーロのユーロ圏国債を買い入れたと発表した。信用不安の深刻化が懸念されるイタリア、スペインの国債を買い支えたもよう。買い入れ額は減少傾向にあったが、前々週の66億 […]

欧州中央銀行(ECB)は5日、前週に流通市場で総額133億ユーロのユーロ圏国債を買い入れたと発表した。信用不安の深刻化が懸念されるイタリア、スペインの国債を買い支えたもよう。買い入れ額は減少傾向にあったが、前々週の66億ユーロから倍増した。しかし、ユーロ圏の金融市場では動揺が続いており、効果は限定的となっている。

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ECBは昨年5月、ギリシャの財政危機で動揺した金融市場を支えるため、財政悪化国の国債を流通市場で買い取るという異例の措置を開始。今年3月から停止していたが、信用不安がイタリア、スペインにも波及し、両国の国債の利回りがユーロ導入後の最高水準に達したことから、8月初めに買い入れを再開していた。これまでの買い入れ額は1,290億ユーロに達した。

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ECBの介入拡大にもかかわらず、ユーロ圏の金融市場では混乱が拡大している。欧米の景気減速や、米政府が2008年の金融危機に際して銀行が住宅ローン担保債権を不当に販売したとして、米国、欧州などの17銀行を提訴したことから、5日の欧州証券市場では金融株を中心に大幅に値下がり。債券市場でもギリシャ、イタリア、スペインの国債が大幅に値下がりし、利回りが急上昇した。逆に信用度が高いドイツ国債は買い殺到で利回りがユーロ導入後の最低水準まで低下。ギリシャの10年物国債との利回り格差は17.3%に達し、最高記録を更新した。

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欧州中央銀行(ECB)の同日の発表によると、行き場を失った資金がECBのオーバーナイト預金に殺到しており、預金残高は1,511億ユーロと昨年8月以来の高水準に達している。資金のリスク回避で金融市場の流動性が弱まり、目詰まりを起こしている状況で、新たな金融危機に発展する懸念が強まっている。

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一方、11月にECB新総裁に就任するイタリア中銀総裁のマリオ・ドラギ氏は同日の講演で、ECBによる国債買い取りについて「一時的な措置だ」と述べ、継続・拡大に後ろ向きの見解を表明。信用不安対策として、不均衡なユーロ圏各国の経済の統合や、財政での協調強化を進める必要性を強調した。

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