2011/9/19

総合 –EUウオッチャー

財政規律改革案を承認、ギリシャ追加支援は先送り=EU財務相会合

この記事の要約

EUは16~17日にポーランドのブロツワフで財務相会合を開き、ギリシャの財政危機に端を発したユーロ圏の信用不安問題への対応を協議した。会合では長期的な対策として、EUの財政規律を定めた安定成長協定の改革案を承認したものの […]

EUは16~17日にポーランドのブロツワフで財務相会合を開き、ギリシャの財政危機に端を発したユーロ圏の信用不安問題への対応を協議した。会合では長期的な対策として、EUの財政規律を定めた安定成長協定の改革案を承認したものの、ギリシャへの追加支援について結論を先送りするなど、足元の問題で新たな措置を打ち出すには至らなかった。

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安定成長協定の改革は、財政危機の再発を防ぐのが目的。現行のルールでは、EU加盟国に財政赤字を国内総生産(GDP)比3%以内に抑えることを義務付けており、ユーロ圏の違反国にGDPの最大5%に相当する制裁金を課す規定もあるが、これまで違反に対して制裁が発動された例はない。こうした甘い体質がギリシャなどの財政悪化を招き、ユーロ圏全体を揺るがす信用不安問題を引き起こした反省を踏まえ、EUは3月の財務相理事会で改革案を発表。加盟国と欧州議会は今回の財務相会合に先立つ15日に改革案の内容で合意していた。

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承認された案では、財政赤字がGDP比3%を超えるか、債務残高がGDP比60%を超えた国に対して、まず欧州委が制裁を勧告し、ユーロ圏17カ国が人口に応じて票数を割り当てられる特定多数決システムで勧告を承認すれば、対象国は是正を求められる。勧告が受け入れらなかった場合、欧州委は1カ月後に再度勧告を行うことができ、今度は単純多数決で過半数が反対しない限り制裁発動が決まるという「逆多数決」方式が採用される。これまでより容易に制裁を発動できる形となる。

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欧州議会は同案を9月26日の本議会で承認する予定。一部の詳細を詰めた上で、11月に正式に法制化される見込みだ。

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ユーロ圏の財政不安問題をめぐっては、ギリシャへの追加支援、EUが財政危機に陥ったユーロ参加国に緊急金融支援を行う「欧州金融安定基金(EFSF)」の拡充が大きな焦点となっている。

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ギリシャは昨年5月、EUとIMFから3年間で総額1,100億ユーロの緊急協調融資を受けることが決まった。ユーロ圏が800億ユーロ、IMFが300億ユーロを負担する。これまでに5回にわけて融資が実行された。

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深刻な財政危機が続くギリシャは、当面のつなぎ資金として、80億ユーロに及ぶ第6弾融資の早期実施を要請している。しかし、追加融資の条件となるギリシャの財政再建が停滞し、財政赤字が計画より膨らんでいることから、今回の財務相会合では実施を10月まで見送ることを決定。ギリシャ政府に追加対応を促した。

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これを受けてギリシャのパパンドレウ首相は18日、予定していた訪米を取りやめて緊急閣議を開催。閣議後の記者会見でベニゼロス財務相は、2011、12年の財政再建目標を達成するため一層の歳出削減に取り組む意向を表明したが、具体策は示さなかった。

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ギリシャに関しては、EUとIMFは1,100億ユーロの支援に続く総額1,590億ユーロの第2次支援を実施することでも合意している。しかし、フィンランドが条件としてギリシャに担保を求めている問題などが障害となって、正式決定に必要なユーロ圏17カ国の承認手続きが難航している。今回の会合でも進展はなかった。

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もうひとつの課題が、EFSFの拡充。すでに支援対象となっているギリシャ、アイルランド、ポルトガルに加え、ギリシャ危機の余波で国債利回りが急上昇しているイタリア、スペインを支える必要が生じているためだ。ユーロ圏17カ国は7月の臨時首脳会議でEFSFの機能を強化し、危機に陥った国の国債を流通市場で買い取ることができるようにすることで合意。対象国が危機的状況に陥る前に緊急融資を行えるようにすることも決めた。しかし、EFSFの機能だけでなく、融資枠の拡大を求める声も強まっている。

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今回の財務相会合には、米ガイトナー財務長官が出席した。ユーロ圏の信用不安が米国にも影響を及ぼすことを懸念しているためで、同長官は対応策としてEFSFの融資枠を拡充するよう要求。これに反対するドイツのショイブレ財務相と衝突する一幕があった。

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