2012/6/11

総合 –EUウオッチャー

欧州委が銀行危機対応の新枠組み発表、公的資金投入回避が柱

この記事の要約

欧州委員会は6日、域内銀行の経営危機対策に関する新たな枠組みを提案した。財政や納税者にしわ寄せが及ぶ公的資金投入を避け、銀行や債権者の負担で破たん処理などを進めることを柱とする内容。2018年の新制度導入を目指す。\ 欧 […]

欧州委員会は6日、域内銀行の経営危機対策に関する新たな枠組みを提案した。財政や納税者にしわ寄せが及ぶ公的資金投入を避け、銀行や債権者の負担で破たん処理などを進めることを柱とする内容。2018年の新制度導入を目指す。

\

欧州委の案では、加盟各国が国内銀行の経営危機に備えて基金を創設し、破たんした銀行につなぎ資金を提供して、営業を続けることができるようにする。破たん処理の費用も賄う。基金は各国の銀行が、10年間で総預金額の1%の相当する額を積み立てる形で拠出する。また、各国が同基金を融通しあえるようにする。これが実現すると、EU27カ国を合わせた基金の規模は1,000億ユーロに達する。

\

また、各国当局による銀行経営への介入権強化に向けたEU共通ルールも整備する。これにより、経営破たんに陥る前に経営再建策をまとめさせるほか、破たん時の処理も当局の主導で行えるようにする。具体的には、身売りや合併を命じる権限を持つ。さらに、破たん処理に際して、対象銀行の債権者、株主に一定の負担を強いる権限も認められる。

\

EUでは2008年のリーマンショック、ギリシャに端を発した信用不安による銀行の経営悪化が相次ぎ、銀行救済のため08年10月から昨年10月にかけて投入された公的資金は域内総生産(GDP)の37%に相当する約4兆5,000億円に達した。このため欧州委は、公的資金注入による銀行救済を極力回避し、破たんに追い込まれた場合も税金を投入しないで処理を進める仕組みを整える。

\

今回の案の成立には、加盟国と欧州議会の承認が必要。各国の金融運営を大きく左右するだけに、協議が長引く可能性がある。とくに、金融主権にこだわる英国の対応が注目される。

\