2012/6/11

総合 –EUウオッチャー

スペインも金融支援要請へ、EUは最大1千億ユーロ用意

この記事の要約

ユーロ圏17カ国は9日、財務相による緊急電話会議を開いて、銀行の資金不足が深刻化しているスペインへの支援について協議し、EUが同国政府に最大1,000億ユーロの支援を行うことで合意した。債務危機に直面するスペイン政府が単 […]

ユーロ圏17カ国は9日、財務相による緊急電話会議を開いて、銀行の資金不足が深刻化しているスペインへの支援について協議し、EUが同国政府に最大1,000億ユーロの支援を行うことで合意した。債務危機に直面するスペイン政府が単独で国内銀行を支えることができない状況にあることを受けたもの。スペインは近日中に支援を正式に要請する。ユーロ圏の債務危機は、ギリシャ、アイルランド、ポルトガルに続き、圏内4位の経済国であるスペインも支援要請を迫られる事態に発展した。

\

スペインは独立監査人が21日までに銀行の財務状況を調査し、必要な資本注入額を算定した上で、EUに支援を要請する。国債償還の資金を自力で調達できず、デフォルト(債務不履行)を回避するため支援を要請したギリシャ、アイルランド、ポルトガルとは異なり、銀行救済のための支援要請であることから、追加の財政緊縮策実施といった条件は付かない。

\

スペインは2008年のリーマンショックに端を発した世界金融危機の余波で不動産バブルが崩壊し、銀行が巨額の不良債権を抱え込むことになった。ギリシャを震源地とする信用不安がスペインに飛び火したことで、銀行の経営が悪化し、不良債権処理は遅れている。政府は5月、全銀行を対象とした新たな不良債権計画を発表し、大手銀行バンキアに235億ユーロの支援を行うことを決めたが、これが銀行の先行き不安をあおり、状況が深刻化。7日には欧州系格付け会社フィッチ・レーティングスが、スペイン国債の格付けを3段階引き下げた。また、国際通貨基金(IMF)は8日、スペインの銀行は最低400億ユーロの資本増強が必要との見通しを示していた。

\

スペインは債務危機にありながらも国債発行で資金を調達できている。しかし、国債利回りが高水準にあり、銀行支援の資金調達に限界がある。このままでは財政が一段と悪化して、信用不安が拡大することから、EUへの支援要請を迫られることになった。

\

EUは正式な支援要請があった場合、財政危機に直面するユーロ参加国に緊急金融支援を行う「欧州金融安定基金(EFSF)」または7月に発足する欧州安定メカニズム(ESM)」を通じて支援を行う見通し。スペインの銀行再編基金(FROB)が窓口となって資金を受け取り、政府の管理下で各銀行に資本注入する形となる。

\

EUはギリシャ、アイルランド、ポルトガルにIMFと共同で支援を行っているが、スペインへの支援にIMFは加わらず、銀行の経営改革のチェックといった役割を果たすにとどまる。

\