2013/6/17

総合 –EUウオッチャー

ギリシャの財政健全化に暗雲、国営ガス会社の売却難航で

この記事の要約

ギリシャの財政健全化に狂いが生じてきた。柱のひとつである国有資産売却計画で、国営ガス会社DEPAの売却が暗礁に乗り上げ、今年の目標を達成できない恐れが出てきたためで、政府は新たな対応を求められる。\ ギリシャ政府はDEP […]

ギリシャの財政健全化に狂いが生じてきた。柱のひとつである国有資産売却計画で、国営ガス会社DEPAの売却が暗礁に乗り上げ、今年の目標を達成できない恐れが出てきたためで、政府は新たな対応を求められる。

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ギリシャ政府はDEPAをロシアの天然ガス最大手ガスプロムに売却する予定だった。しかし、ガスプロムはDEPAには巨額の売掛金があり、財務が不安定として、10日に交渉を打ち切った。これによって予定していた7億~10億ユーロの売却益が宙に浮くことになった。

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債務危機に直面するギリシャは、EUと国際通貨基金(IMF)から金融支援の条件として求められている財政再建の達成に向けて、2016年までに国有資産の売却で95億ユーロを調達することを約束している。今年の売却目標は26億ユーロ。5月に国営賭博事業会社OPAPの株式33%を約7億ユーロで売却することを決めた。しかし、大きな収入を見込んでいたDEPAの売却がとん挫したことで、目標達成は厳しい状況だ。

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ギリシャはDEPA売却が長引き、財政健全化計画を予定通り進めることができなくなると、EUによる次回融資(33億ユーロ)の実施が見送られ、信用不安が再燃する恐れがある。

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サマラス首相は11日、DEPA売却の新たな入札を公示する予定であることを明らかにし、国有資産売却の目標達成は可能として、増税など追加の財政緊縮策は不要との見解を示した。ただ、新たな売却先を早期に見つけ、年内に取引をまとめるのは至難の業で、EUとIMFに国有資産売却計画の見直しを要請する事態に追い込まれるとの見方も出ている。

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一方、ギリシャ政府は11日、財政緊縮の一環として、国営放送局ERTの一時閉鎖を発表。ERTは12日に放送を停止した。

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サマラス首相は、ERTが「公費の無駄遣いの温床」として一時閉鎖を決め、2,700人の職員の削減など規模を縮小した上で、新たな組織として再スタートさせる方針を示している。しかし、突然の閉鎖に労組が反発しているほか、連立与党内でも全ギリシャ社会主義運動党(PASOK)と民主左派が反対しており、同問題が政局を大きく揺るがす事態に発展する可能性もある。

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