2013/9/30

環境・通信・その他

航空排出規制の適用縮小、欧州委が表明

この記事の要約

欧州委員会のカラス副委員長(運輸担当)は24日、国連の専門機関である国際民間航空機関(ICAO)の総会で国際的な合意が形成された場合、EUが打ち出した航空部門に対する温室効果ガス排出規制の適用範囲を縮小する考えを明らかに […]

欧州委員会のカラス副委員長(運輸担当)は24日、国連の専門機関である国際民間航空機関(ICAO)の総会で国際的な合意が形成された場合、EUが打ち出した航空部門に対する温室効果ガス排出規制の適用範囲を縮小する考えを明らかにした。EUが譲歩の姿勢を見せることで、同日開幕したICAO総会での合意を促すのが狙いとみられる。総会はカナダのモントリオールで10月4日まで開催される。

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ICAO総会では航空機の温室効果ガス排出削減に向け、世界全体をカバーする規制の導入について議論が行われる。9月初めに開かれたICAO理事会では2020年以降の国際的な規制の枠組みを構築することで基本合意し、16年までに詳細を決定する方針を確認した。特定のセクターによる単一の規制が実現すれば、世界初の試みとなる。

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EUは2008年、EU排出量取引制度に航空部門を組み込み、過去の実績に基づいて域内の空港を発着するすべての航空各社に二酸化炭素(CO2)の排出枠を割り当てて、実際の排出量が枠を超えた場合は超過分の排出権を市場で購入するか、制裁金の支払いを求めるという規制の導入を決めた。第1段として、11年1月からEU域内の路線を結ぶ航空機に新規制が適用され、12年1月からは域内の空港を発着して域外と結ぶ国際線の航空機に対象が拡大された。

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しかし、国際間の合意がないまま域外の航空会社に域内ルールを適用するEUのアプローチに対し、米国、中国、インド、ロシアなどが国際法に抵触するとして強く反発。昨秋のICAO理事会では36カ国のうち26カ国がEU規制に反対を表明するなど、EUは国際的に孤立した。欧州委はこうした事態を受け、昨年11月に域内と域外を結ぶ国際線の航空機に対する規制を1年間、凍結すると発表。今秋のICAO総会で航空機の排出規制に関する国際的な合意をまとめるよう強く要求し、合意形成に至らなければEU独自の規制を再開すると警告していた。

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欧州委のカラス副委員長はICAO総会開会式後の会見で、「EUは妥協策として排出量取引制度の適用対象を縮小する用意がある」と発言。具体的には排出量取引制度の適用範囲を域内に限定する方針とみられる。ただ、同氏は国際的な合意に基づく規制の枠組みが確立される20年までは、各国・地域とも独自の規制を導入することができると指摘し、論理的には域外の航空会社に対してEUの規制を適用することは可能との考えを示した。

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国際航空運送協会(IATA)のタイラー事務総長は、温室効果ガス削減に向けた国際的な取り決めがなければ国や地域単位のプログラムが乱立し、スキームの重複や利害対立が生じるおそれがあると指摘。「ICAO総会である程度の合意が得られると期待している。今回の会議が温暖化対策を前進させるうえで歴史的な契機になることをすべての関係者が理解している」と述べた。

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