欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/2/23

総合 – 欧州経済ニュース

ギリシャ支援4カ月延長で合意、とりあえず最悪の事態回避

この記事の要約

ユーロ圏は20日にブリュッセルで開いた臨時財務相会合で、2月末に期限を迎えるEUのギリシャに対する金融支援を4カ月延長することで基本合意した。ギリシャが現行の金融支援の枠組みを原則的に踏襲し、財政改革などを推進することで […]

ユーロ圏は20日にブリュッセルで開いた臨時財務相会合で、2月末に期限を迎えるEUのギリシャに対する金融支援を4カ月延長することで基本合意した。ギリシャが現行の金融支援の枠組みを原則的に踏襲し、財政改革などを推進することで歩み寄った。これによってギリシャが3月に支援を打ち切られ、財政が破たんに追い込まれる最悪の事態はとりあえず回避されたが、政府は23日までに改革案を提示し、EUなどの承認を取り付ける必要がある。この改革の中身が肝心だけに、なお課題は積み残されており、ギリシャの政権交代を機に混迷した支援問題が決着したとはいえない状況だ。

債務危機でEUと国際通貨基金(IMF)から金融支援を受けたギリシャは、見返りとして増税、年金支給額の引き下げ、公務員削減などの緊縮策を柱とする財政再建計画の実施を義務付けられている。しかし、国民に痛みを与える緊縮策の放棄を掲げる新政権が1月に発足。厳しい財政緊縮策を伴う現行支援の延長が必要とする他のユーロ圏諸国と、支援の枠組み見直しを求めるギリシャが対立し、初の公式協議の場となった11日のユーロ圏財務相会合は物別れに終わった。

16日には欧州委員会が再会合に先立って、ギリシャが債務返済を続け、財政再建計画を大枠で継続する代わりに、EUは現行支援の枠組みに柔軟性をもたせ、ギリシャ経済に悪影響を及ぼすような措置の追加実施は要求しないという妥協策に基づく現行支援の一時延長をギリシャに提案した。これをバロファキス財務相が一度は受け入れたが、同草案が欧州委案と異なり、肝心の「柔軟性」に関する部分で同意した条件が盛り込まれていないとして拒否に転じ、同日の会合は合意に至らないまま短時間で終了。ユーロ圏はギリシャが現行の枠組みに基づく支援の延長を要請しなければ再協議に応じず、支援を月末で打ち切ると、最後通牒を突き付けていた。これを受けてギリシャは19日に6カ月の支援延長を要請し、20日に再会合が開かれた。

同会合で合意した支援の4カ月延長は、ギリシャが現行の枠組みに沿った改革を進めることが条件。政府は23日までに具体的な措置のリストを提示し、基本承認されれば4月末までに詳細を固め、正式決定するという手順となる。ギリシャ側は合意に際して、プライマリー・バランス(基礎的財政収支)の黒字化継続を約束したほか、債務削減の要求も取り下げ、今後も「トロイカ」と呼ばれる欧州委、欧州中央銀行(ECB)、IMFの合同調査団が財政再建の実施状況を検査することを受け入れた。ギリシャはプライマリー・バランスの黒字幅を経済状況に応じて縮小できるとする譲歩を引き出したものの、緊縮策継続という原則を貫くEUに事実上、屈した格好だ。

ギリシャはEUの現行支援で最後となる72億ユーロの融資を受けることができなければ、3月中にも資金繰りに行き詰まる恐れがあり、このところ国内銀行では信用不安の再燃で預金流出が加速し、預金引き出し規制の導入がささやかれる状況に追い込まれていた。反緊縮、現行金融支援の枠組みの大幅見直しを掲げて総選挙で勝利した新政権は瀬戸際の交渉を続けてきたが、ついに折れざるを得なかった。

ただ、バロファキス財務相は、緊縮策見直しの余地がある改革案をギリシャの主導で策定できる点を成果として強調しており、新政権は同問題で威信をかけてぎりぎりの交渉を展開する見通し。政府は税収確保に向けた脱税、汚職対策の強化などを約束しているが、年金支給額引き下げ、公務員削減、国営企業民営化といった緊縮策の軸となる措置は見直す方針を打ち出しており、EUとの溝はなお深い。追加融資の実行も、改革案の承認が必要となる。

このため、今回の合意は協議を継続するための時間かせぎという側面が大きい。ユーロ圏財務相会合のデイセルブルム議長(オランダ財務相)は記者会見で、「合意は双方の信頼再構築の第一歩だ」と、慎重な言い回しで合意を評価するにとどめた。