欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/10/19

EU情報

難民対策、トルコとの連携強化などで合意

この記事の要約

EUは15日、ブリュッセルで首脳会議を開き、中東などから押し寄せる難民の流入を抑制するため、欧州に向かう難民の主要な経由地になっているトルコとの連携強化に向けて協議を加速させることで合意した。また、欧州対外国境管理協力機 […]

EUは15日、ブリュッセルで首脳会議を開き、中東などから押し寄せる難民の流入を抑制するため、欧州に向かう難民の主要な経由地になっているトルコとの連携強化に向けて協議を加速させることで合意した。また、欧州対外国境管理協力機関(FRONTEX)の権限を拡大して国境警備を強化するとともに、難民の認定要件を満たさない不法移民の本国送還を徹底する方針で一致した。

国際移住機関(IOM)などによると、今年に入り欧州に流入した難民や移民は60万人を超え、年末までに100万人に達するとされる。EUは先月、ハンガリーなど東欧諸国の反対を押し切って、紛争が続くシリアなどからの難民合わせて16万人を加盟国が分担して受け入れる計画を承認した。しかし、各国の対応には限界があるため、受け入れ分担を実現する一方で、難民の流入抑制策に軸足を移し、シリア難民の支援にあたる国連機関などに少なくとも10億ユーロを追加拠出することや、域外との国境管理を強化するなどの方針を打ち出し、具体策を検討している。

首脳会議では、欧州委員会がトルコ政府との合意内容をもとに策定した「行動計画」を承認した。トルコはEUからの資金支援で約200万人のシリア難民を収容できる難民受け入れ施設を設置するほか、沿岸警備を拡充することで合意している。EUが拠出する資金の規模は明らかになっていないが、ドイツのメルケル首相はトルコ側が要求する30億ユーロの線で調整が進んでいることを明らかにした。

一方、トルコが求めるEUとのビザ(査証)自由化について、欧州委は先の協議で難民対策での協力に対する見返りとして、具体的な作業を加速させることで合意した。しかし、加盟国からは「安易な条件でビザを免除するべきではない」(フランスのオランド大統領)といった意見が出ており、全面的な自由化には慎重論が根強い。このため、当面はビジネス目的の渡航者や留学生を対象に免除措置が導入される公算が大きい。

トルコ側はこのほか、EU加盟交渉の加速も求めている。EUのトゥスク大統領は記者会見で「トルコと合意できるかどうかはトルコ側の行動しだいだ」と述べ、トルコが積極的な協力姿勢を示せばEU側も相応の対応をとる考えを示した。

一方、加盟国は難民以外に多くの不法移民が域内にとどまっている問題に対処するため、FRONTEXの機能や権限を強化することで合意した。現在130人の職員を1,000人体制に増強し、新たに専門の部署を設置して難民の認定審査や不法移民の送還手続きを迅速化する。