中・東欧、CIS諸国、ロシアに特化した情報誌

2014/3/26

ロシア

ロシア経済に影、ウクライナ紛争で

この記事の要約

ウクライナ問題がロシア経済に影を落とし始めた。米格付会社のスタンダード&プアーズ(S&P)は20日、フィッチは21日に、ロシアの信用格付けの見通しを「弱含み」に引き下げた。クリミア共和国併合に伴い欧米諸国との関 […]

ウクライナ問題がロシア経済に影を落とし始めた。米格付会社のスタンダード&プアーズ(S&P)は20日、フィッチは21日に、ロシアの信用格付けの見通しを「弱含み」に引き下げた。クリミア共和国併合に伴い欧米諸国との関係悪化が懸念されるためだ。すでに外国投資家はロシアへの投資に慎重で、政府や企業の資本調達が難しくなっている。

S&Pとフィッチはともに、ロシアの信用格付けを従来の水準に維持した。S&Pは外貨建てが「BBB」、現地通貨建てが「BBB+」で、それぞれ投資適格とされる中で下から2番目、3番目のランク。フィッチは外貨・現地通貨建てともに「BBB」で、投資適格の下から2番目のランクだ。両社ともに、現時点では制裁の影響は微小にとどまるが、ロシアがクリミア併合の手続きを完了したことで今後、制裁が強化される可能性が高いことを理由に挙げている。

プーチン大統領は21日、報道官を通じ、「見通し」の引き下げを恣意的なものとして批判する立場を明らかにした。両格付け会社は同日、そのような事実はないと否定するコメントを発表している。

■借入れコスト上昇

外国投資家もロシア投資に慎重になっている。ロシア証券市場に上場する企業の時価総額は年初以来1,800億ドル縮小した。これは国内総生産(GDP)の1割に当たる。ルーブル下落を加味すると、実に4,000億ドルの資産が失われた計算となる。

米ドル建て10年物国債の金利は22日時点で5.4%となり、年初より1ポイント高くなった。企業でも事情は同じで、ガスプロムなど国営企業を中心に金利が上昇している。

また、ロンドン証取ではロシア53企業の株式新規発行手続きが凍結された。これらの企業は総額5,000億ドルの調達を計画していた。

仏金融サービス大手ナティクシスのアナリスト、シルヴィア・フバル氏は、「ロシアからの資本流出額が今年1-3月期だけで700億ドルに上り、昨年通期(630億ドル)を超える恐れがある」と話す。また、今年の経済成長率は最大でも0.7%止まりになるとみている。