2015/6/3

総合・マクロ

中東欧諸国の原子力計画

この記事の要約

東欧の欧州連合(EU)加盟国が軒並み原子力の利用を検討している。環境保護に向けた二酸化炭素(CO2)削減目標の達成とともに、ウクライナ紛争を受けロシア産天然ガスへの依存縮小への意思が強まっていることが背景にある。各国の状 […]

東欧の欧州連合(EU)加盟国が軒並み原子力の利用を検討している。環境保護に向けた二酸化炭素(CO2)削減目標の達成とともに、ウクライナ紛争を受けロシア産天然ガスへの依存縮小への意思が強まっていることが背景にある。各国の状況を概観する。

■チェコ

政治も国民も原子力発電の利用に賛成している。5月19日に閣議決定された新エネルギー政策によると、2050年の時点で原子力が電源の46~58%を占める見通しだ。これに向けてテメリンとドゥコヴァニの両発電所に新炉を設置する計画で、来年には入札手続きが開始される予定。

■ルーマニア

原子力公社ニュークリア・エレクトリツァが、国内唯一のチェルナヴォダ原発に原子炉2基の追加設置を計画する。投資額は60億ユーロ。

当初は独RWEや伊エネル、ベルギーのエレクトラベル、西イベルドーラ、チェコCEZ、ルクセンブルクのアルセロール・ミタルなどが参加を表明していたが、金融危機を機に計画から撤退。その後、中国広核集団からの出資が決まった。

ニュークリアエレクトリカは先ごろ、法務・金融・技術顧問業務の入札条件を発表したところ。

■スロバキア

ボフニツェとモホウツェの2原発が稼働中。モホウツェでは原子炉2基の新設プロジェクトが進行しているが、投資額は当初予定の28億ユーロから46億ユーロに膨らむ見通しという。パヴリス経済相によると、原発を除くと同国はエネルギーのすべてを外国に依存し、ロシアからの天然ガス調達が死活的な意味を持つことになる。

■ブルガリア

EU加盟の条件として6基あった原子炉のうち4基を閉鎖した後、政府は再び新炉建設を目指している。ロシアと提携してベレネ原発を建設する計画は中止、代わりに既存のコズロドゥイ原発の拡張を予定する。これに基づき、昨年8月に東芝の米国子会社であるウエスチングハウスと新炉1基の設置で協定を結んだ。新炉の発電能力は1,100メガワットで稼働寿命は60年間となる。

■ハンガリー

14年1月、オルバン首相がロシア原子力公社(ロスアトム)にペーチュ原発の拡張工事を発注した。2基を新設する内容で、ロシアからの100億ユーロの融資で必要資金をまかなう方針。この取引は、入札なし、議会の関与なしで行われたため、国内外から強い批判が寄せられた。

■ポーランド

09年に閣議決定された原子力計画では原子炉3基(合計出力5,000メガワット)を設置する予定だが、現在足踏み状態。バルト三国と共同で設置するはずだったヴィサギナス原発は計画中止が予想されている。

(東欧経済ニュース2014年9月23日号「ルーマニアの電力会社、原発拡張計画で提携先募集」、13年11月27日号「中国、中東欧のプロジェクトに100億ドル融資」、12年10月17日「リトアニア国民投票で原発ノー、日立の事業戦略に影響も」、11年12月14日付「ポーランド国営電力PGE、リトアニア原発プロジェクトから撤退」を参照)