2015/6/3

コーヒーブレイク

ユーラシア主義とは?~ロシア

この記事の要約

プーチン大統領が主導する「ユーラシア経済連合(EEU)」を始め、最近のロシアでよく聞かれる「ユーラシア」。これは単なる地理的概念ではなく、実は、1920年代に登場した思想「ユーラシア主義」と関連している。 1917年のロ […]

プーチン大統領が主導する「ユーラシア経済連合(EEU)」を始め、最近のロシアでよく聞かれる「ユーラシア」。これは単なる地理的概念ではなく、実は、1920年代に登場した思想「ユーラシア主義」と関連している。

1917年のロシア革命後に亡命したロシア人の多くは、革命と内戦の経験を大きな悲劇としてとらえていた。そんな中で、これを歴史的な次へのステップとして位置付けた少数派がいた。これが「ユーラシア主義者」だ。

ユーラシア主義者は、ピョートル大帝以降の欧州化がロシアの混乱につながったと考えた。その上で、欧州の覇権的思想を克服し、自らの文化の価値を自認するアジア諸民族のリーダー的役割をロシアが担うべきと説いた。

これだけをみると、今日のプーチン大統領の言動と一致する部分が大きい。しかし、決定的に違うのはロシアが目指すべきゴールだ。

ユーラシア主義者は欧州との隔絶を訴え、その視線を東に向けていた。統合の対象はアジア系民族で、欧州への影響拡大は考えていなかった。

一方でプーチン大統領はロシア民族主義を追及している。統合の対象は欧州に住むロシア人少数派だ。欧州との対決姿勢を明確にしているのもユーラシア主義者とは異なる。

もう一つ、立場が大きく異なるのはソ連に対する評価だ。プーチン大統領はソ連崩壊を「地政学的な悲劇」と呼び、一貫してソ連時代を賛美してきた。

これに対し、ユーラシア主義者は1930年代後半、大粛清が行われた当時に、スターリンの抑圧政治によって「国内の創造的な力が押しつぶされた」と鋭く批判していた。上からの押し付けで自由な発想が許されなかったことは、現在、ソ連崩壊を導いた原因の一つと考えられている。

欧米の文化や思想の影響力は今日でも強く、他の地域の独自文化とのせめぎ合いは続いていくだろう。文化の伝播(ぱ)は国や政治権力の地域的支配と密接に関係してきた。このため、文化を巡る議論

が政治に利用される可能性は強く、十分に注意が必要だ。