2013/9/16

環境・通信・その他

欧州委、通信市場統合に向け規制改革発表

この記事の要約

欧州委員会は11日、通信分野における単一市場の創設に向けた規制改革案を発表した。EU域内で規制を統一し、通信会社が国境を越えて事業展開しやすい環境を整えて競争を促し、消費者に低価格で質の高いサービスを提供するのが狙い。具 […]

欧州委員会は11日、通信分野における単一市場の創設に向けた規制改革案を発表した。EU域内で規制を統一し、通信会社が国境を越えて事業展開しやすい環境を整えて競争を促し、消費者に低価格で質の高いサービスを提供するのが狙い。具体的には国ごとに異なる認可基準を域内で統一することや、域内の他の国との国際通話や携帯電話の国際ローミング(相互接続)にかかる手数料の廃止などが提案に盛り込まれている。

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「接続された大陸(Connected Continent)」と名付けられた通信規制の改革案は、欧州委のバローゾ委員長が11日に欧州議会で行った年次演説で打ち出した。同委員長は市場統合に向けた長年にわたる取り組みにもかかわらず、「域内には依然として28(カ国)の市場が存在する」と述べ、各国の通信当局がそれぞれ国内市場を管轄する現行システムが、EUレベルでの大規模な投資や複数市場での事業展開を妨げていると指摘。「通信分野における単一市場の実現に向けて大きく前進することが欧州にとって経済成長のカギを握る」と強調し、市場統合の必要性を訴えた。

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改革案によると、国ごとに異なる認可基準が域内で統一され、通信事業者は共通ルールに基づいて域内の複数の市場で容易にサービスを提供できるようになる。料金規制に関しては、固定電話による国際通話や、域内の他の国で携帯電話を使用する際のローミング手数料の割増しを原則として廃止し、国内通話並みの料金水準を実現する。具体的には、携帯電話で自国から域内の他の国に通話する際の料金は1分当たり0.19ユーロ以内に制限し(現状では国によって0.35ユーロ~1.19ユーロ)、着信時の手数料については2014年7月1日付で廃止する。

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欧州委はこのほか、企業が長期的な計画に基づいて投資しやすい条件を整えるため、EUレベルで周波数管理を行うことを提案している。事業者への周波数の割り当てやオークションの実施などは引き続き各国当局が管轄するものの、契約条件を調和させるなどで市場の透明性を高めて投資を促し、日・米・韓に比べて大きく後れをとっている第4世代(4G)携帯電話サービスや高速インターネット接続サービスの普及を図る。欧州委はさらに、通信事業者が自社と競合するサービスに対し、回線へのアクセスを制限するなどの差別的行為を禁止する「ネット中立性」の原則を法制化することも改革案に盛り込んだ。スマートフォンの急速な普及などを背景に、ネット上のトラフィックがひっ迫するなか、大手通信会社がIP電話の「スカイプ」やグループチャットサービス「ワッツアップ」などの利用を制限している実態が明らかになったことを受けた措置だ。

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欧州委の競争総局は通信分野で市場統合が実現した場合、年間1,100億ユーロの経済効果が生まれ、域内総生産(GDP)を0.9%押し上げると試算している。

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