欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/6/29

EU情報

難民6万人の受け入れを加盟国で分担、義務化は見送り=首脳会議

この記事の要約

EU首脳会議は26日未明、紛争が続く北アフリカや中東から地中海を渡り、欧州を目指す難民が急増している問題への対応策として、向こう2年間に計6万人を自主的に各国が分担して受け入れることで合意した。欧州委員会は先月、各国の経 […]

EU首脳会議は26日未明、紛争が続く北アフリカや中東から地中海を渡り、欧州を目指す難民が急増している問題への対応策として、向こう2年間に計6万人を自主的に各国が分担して受け入れることで合意した。欧州委員会は先月、各国の経済規模や既に受け入れている難民の数などに応じて割当人数を決め、受け入れを義務化する制度の導入を提案したが、首脳会議では東欧諸国など10カ国以上が反対し、採用されなかった。

各国が受け入れを分担するのは、負担が集中しているイタリアとギリシャに上陸する不法移民のうち、EUが保護の必要性を認めた最大4万人の難民。このほか、シリアなどから逃れてEU域外で暮らす2万人の難民についても各国が分担して受け入れ、再定住させることで合意した。

一方、密航船でイタリアなどに到着した不法移民が十分な審査を受けずに東欧諸国などに流入している現状を踏まえ、地中海沿岸国におけるチェック体制を強化して、受け入れ基準を満たしていない不法移民は速やかに帰国させる方針を確認した。具体的には欧州対外国境管理協力機関(Frontex)の権限を拡大し、これまで加盟国が個別に対応していた本国への送還を支援するほか、不法移民の出身国との間でEUから強制送還された自国民の受け入れに関する協定の締結を急ぐ必要があるとの認識で一致した。

加盟国は7月末までに難民受け入れの分担方法などを詰めるが、受け入れに消極的な国からどこまで協力が得られるかは未知数で、実効性を疑問視する声が上がっている。

トゥスクEU大統領は記者会見で、「今回の合意は問題解決に向けた重要な一歩だ」と強調した。一方、イタリアのレンツィ首相は「(4万人の受け入れ分担は)とても十分な数字とは言えず、わが国にとってはほんの小さな助けにしかならない。EUとしてやるべきことはもっとあるはずだ」と発言。難民受け入れの公平な負担に難色を示している一部加盟国に対する不満をあらわにした。