欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/6/29

EU情報

英首相、首脳会議でEU改革案を説明

この記事の要約

EU残留の是非を問う国民投票の実施を控える英国のキャメロン首相は25日のEU首脳会議で、政府が残留を取り付けるため目指しているEU制度改革について説明した。ただ、今回の首脳会議では他の難問を抱えていたため協議は行われず、 […]

EU残留の是非を問う国民投票の実施を控える英国のキャメロン首相は25日のEU首脳会議で、政府が残留を取り付けるため目指しているEU制度改革について説明した。ただ、今回の首脳会議では他の難問を抱えていたため協議は行われず、同問題をめぐる交渉の開始で合意するにとどまった。EUは12月の首脳会議で改革案について協議する。

キャメロン首相は2年前、移民流入急増などを受けて高まっている国内の反EU勢力の不満を抑えるため、次回の総選挙で与党・保守党が勝利し、自身が再任されればEU離脱の是非を問う国民投票を実施する意向を表明。5月に実施された選挙で大勝したことから、2017年末までに国民投票を実施することになった。

EU離脱に消極的なキャメロン首相は、EUをめぐる国民の不満を和らげるため、英国が求めるEUの改革に対する合意を取り付けた上で投票に臨むという戦略を描いている。改革案には、EUからの移民に対する社会保障給付を制限できるようにすることや、EU統合の深化から英国が除外される権利の確保などが含まれる。

キャメロン首相が改革案について、公式な場で説明したのは初めて。当初は詳細を提示する方針だった。しかし、首脳会議はギリシャの債務問題、北アフリカなどから押し寄せる難民への対応で忙殺されたため、同問題には晩さん会で10分程度しか時間を割くことができず、キャメロン首相は改革案の概要を示すにとどまった。

EUは今後6カ月をかけて改革案の具体的な内容を検討し、12月の首脳会議で協議することになる。ただ、英が求める改革には、全加盟国による承認が求められるEU基本条約の改定が必要。とくに移民への制限は、EUの基本理念の中でも重視される域内の人の自由な移動に反することから、中東欧諸国などの反発が必至だ。EUのトゥスク大統領(欧州理事会常任議長)も25日、首脳会議終了後の記者会見で、欧州のためになる改革については検討するが「EUの基本的価値は売り渡すわけにはいかず、検討の余地はない」と述べ、移民制限につながる改革には応じない姿勢を示しており、英国は厳しい交渉を迫られそうだ。