欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/6/29

EU情報

蘭政府に温効ガス削減策の強化命令、地裁が環境団体の主張支持

この記事の要約

オランダのハーグ地方裁判所は24日、同国政府に温室効果ガス排出削減に向けた対策の強化を命じる判決を言い渡した。約900人の市民を代表して訴えを起こした環境保護団体Urgendaの主張が支持されたかたちで、政府は2020年 […]

オランダのハーグ地方裁判所は24日、同国政府に温室効果ガス排出削減に向けた対策の強化を命じる判決を言い渡した。約900人の市民を代表して訴えを起こした環境保護団体Urgendaの主張が支持されたかたちで、政府は2020年までに温室効果ガス排出量を1990年の水準から少なくとも25%削減するため、必要なあらゆる対策を講じなければならない。判決が実際の政策にどのように反映されるかは不透明だが、ベルギーやノルウェーでも市民団体や環境NGOが温暖化対策の強化を求めて訴訟を起こしており、今回の判決を機に同様の動きが各国に広がる可能性がある。

EUは20年までに温室効果ガス排出量を90年比で20%削減するとの目標を掲げており、EU全体としては目標達成が確実視されている。しかし、オランダはEU諸国の中では天然ガスをはじめとする化石燃料資源に恵まれているため、再生可能エネルギーの普及に向けた取り組みが遅れている。EU統計局(ユーロスタット)によると、オランダのエネルギー消費全体に占める再生可能エネルギーの比率は13年時点で4.5%と、EU平均の15%を大幅に下回っている。Urgendaはこうした現状を踏まえ、海抜ゼロメートル以下の低地が国土の約4分の1を占めるオランダは、温暖化による異常気象や海面上昇によって向こう50年のうちに深刻な危機に直面すると警告。政府に対し早急に追加的な対策を講じるよう求めていた。

ハーグ地裁は判決で、現行の政策では20年までの温室効果ガス削減率は「最大で17%程度」にとどまり、多くの先進国で達成が見込まれる25~40%を大きく下回ると分析。新たな対策を講じることで企業のコスト負担が増大するとの批判に対しては、「気候変動対策はごく一部の業種にマイナス効果をもたらす可能性があるものの、他のすべてのセクターにとってはプラス要因になる」と指摘し、政府は早急に対策を強化して国民の生活を保護する義務があると結論づけた。

政府は判決内容を精査して控訴するか判断する方針。マスフェルト環境相は「政府とUrgendaは同じ目標を共有しているが、そこに到達する手段に関して異なる意見を持っている」と指摘。オランダはEUが掲げる目標に沿って取り組みを進めていると述べ、「1つでも多くの国が足並みを揃えることが温暖化対策の成功につながる」と強調した。