2011/6/15

ルーマニア・ブルガリア・その他南東欧・トルコ

スロベニアの財政健全化に暗雲、年金改革法案が国民投票で否決

この記事の要約

スロベニア政府の財政健全化計画に暗雲が立ち込めている。5日実施された国民投票で、財政支出引き締め策の柱となる年金改革法案が否決されたためだ。パホル首相(社会民主党)は、投票結果は政府に対する国民の信頼が弱まっている証拠と […]

スロベニア政府の財政健全化計画に暗雲が立ち込めている。5日実施された国民投票で、財政支出引き締め策の柱となる年金改革法案が否決されたためだ。パホル首相(社会民主党)は、投票結果は政府に対する国民の信頼が弱まっている証拠として、大幅な内閣改造か前倒し選挙を実施する意向を示した。また、年金改革に代わる財政支出削減案の策定に入っている。

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スロベニアは欧州連合(EU)の新規加盟国のうち、いちはやく2007年に欧州統一通貨ユーロを導入するなど、「東欧の優等生」とみられてきた。しかし、金融危機で経済に大きな打撃を受け、2009年の国内総生産(GDP)は前年比で8.1%も縮小した。翌10年も1.2%の成長にとどまり、危機からの回復が遅れている。

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今年の財政赤字はGDPの5.8%に上り、昨年の5.6%からさらに悪化する見通しだ。また、国家債務は昨年末のGDP比38%から今年末には42.8%に膨らむと予測されている。

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現状のままでは債務履行が難しくなることが明らかなため、政府は支出削減策の目玉として、年金改革法案を提出。年金支給開始年齢を、現行の男性58歳、女性57歳から段階的に男女とも65歳に引き上げる計画だった。しかし、法案に反対する労働組合が中心となって国民投票の実施に持ち込んだ。投票では反対が72%の圧倒的多数を占め、法案が否決された。

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政府は年金改革で2億2,000万ユーロ相当の支出削減を見込んでいた。否決を受けて、他の方策の検討に入っている。ただ、政府は国営企業の民営化に消極的であるほか、先ごろには国内最大手銀行のノバ・リュブリャナ銀行(NLB)の増資に伴い2億5,000万ユーロを投入。国鉄にも1億4,000万ユーロの援助を予定しており、内外から財務の運営に疑問の声もあがっている。

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米スタンダード&プアーズ(S&P)による信用格付けは現在、上から3番目の「ダブルA」だが、財務の健全化に向けた構造改革が進まないと、格下げされる危険がある。

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