2011/8/3

ロシア

欧州の対露依存弱まる、シェールガス開発で=米ベイカー研究所調査

この記事の要約

米国ライス大学ベイカー研究所は7月19日、米国エネルギー省の資金的支援を得て実施した調査「シェールガスと米国の安全保障」を発表し、シェールガスの開発によって、ロシアの欧州に対する影響力が弱まるとの見通しを明らかにした。ロ […]

米国ライス大学ベイカー研究所は7月19日、米国エネルギー省の資金的支援を得て実施した調査「シェールガスと米国の安全保障」を発表し、シェールガスの開発によって、ロシアの欧州に対する影響力が弱まるとの見通しを明らかにした。ロシアのエネルギー資源に対する欧州の依存が小さくなるためで、国際政治における米国と欧州の協働関係が深まると期待している。

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調査によると、旧ソ連圏を除く欧州のガス市場におけるロシアのシェアは現在の27%から2040年には13%に縮小する。このため、ロシアが計画するガスパイプライン「サウス・ストリーム」は採算割れとなり実現しない。また、シュトクマン・ガス田の開発、ヤマル半島のガス液化プラント設置計画に代表される北極海ガス資源開発も実行が2030年以降に持ち越されるという。

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欧州の中には、ロシア産天然ガスへの依存が大きいことが原因で、2008年のロシアによるグルジア侵攻に反対する立場を明確にできない国もあった。エネルギー面で欧州の独立性が高まれば、ロシアの顔色をうかがうことなく、国際問題で米国と歩調を合わせられる。なお、欧州連合が支援するナブッコ・パイプライン計画のガス供給国としては、現在予定されているカスピ海沿岸諸国からイラクに視点が移る可能性もある。

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ポーランドで70件を超える開発免許が付与されるなど、欧州におけるシェールガスの注目も高まっている。ただ、商業生産は、土地法の規定や環境汚染への懸念といった障壁があり、実現が難しい。一方、ロシアへエネルギーを大きく依存するウクライナでは、ロイヤル・ダッチ・シェルなど国際大手が大規模な開発投資を計画している。

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米国のシェールガス生産量は2000年から2010年までに、ゼロから日量100億立方フィート(2億8,320万立方メートル)に急拡大し、2009年にはロシアを追い越して世界最大のガス生産国となった。2040年には生産規模が現在の4倍の日産11億3,000万立方メートルに増加する見通しだ。

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