2013/9/18

ルーマニア・ブルガリア・その他南東欧・トルコ

金鉱開発で世論が二分、ルーマニア政治の問題を露呈

この記事の要約

ルーマニア北西部のロシア・モンタナにおける金鉱開発をめぐって国内世論が二つに分かれている。開発を許可する法案が8月下旬に閣議決定されたことを受けて、環境破壊を懸念する都市部の市民が計画撤回、高い失業率に悩む現地住民が計画 […]

ルーマニア北西部のロシア・モンタナにおける金鉱開発をめぐって国内世論が二つに分かれている。開発を許可する法案が8月下旬に閣議決定されたことを受けて、環境破壊を懸念する都市部の市民が計画撤回、高い失業率に悩む現地住民が計画継続を求めて抗議行動を展開。反対デモの規模が予想以上に大きかったことで政府が議会での採決を延期し、状況は混迷状態に陥っている。

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同金鉱は、政府とカナダの資源会社ガブリエル・リソーシーズが1997年に共同開発で合意したが、環境保護を求める国民の声の存在や、他の国外直接投資プロジェクトで景気が好調だったことなどから、ほとんど手つかずの状態で放置されていた。しかし、国の経済が2008年の金融危機に端を発する不振からなかなか抜け出せない中、政府が改めて金鉱プロジェクトに着目。先月下旬に開発に向けた法案を閣議決定した。

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これに対して、首都ブカレストやブラショフ、クルージュ・ナポカ、ヤシなどの都市で連日、数千人単位の市民が路上に繰り出し、主要道路を封鎖するなど抗議行動を展開。「ロシア・モンタナを守れ」と書かれた横断幕を携えて政府に撤回を求めた。

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一方、失業率が85%にも上るロシア・モンタナでは「ロシア・モンタナの人々を守れ」と対抗スローガンを掲げ、計画実行を訴えている。法案採決の延期後には現地の鉱夫33人が地下300メートルの坑道に立てこもって、ハンガーストライキを実行。5日後にポンタ首相が坑道を訪れて特別委員会での検討を約束し、ようやく中止した。

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合弁会社に約8割出資するガブリエル・リソーシーズは、開発中止となれば40億米ドルの損害賠償訴訟を起こすと予告している。

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■政治の問題を露呈

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ロシア・モンタナは、ルーマニアにおける政治の場当たり性・未成熟さを見せつける恰好の例となっている。1997年当時の政府は公共入札を経ずにガブリエル・リソーシーズとの提携を決めた。しかしその後、2000年のバヤ・マーレ金鉱の鉱さいダム決壊事故も影響して環境懸念の声が静まらず、不人気のロシア・モンタナ計画は長年にわたって棚上げされた。ポンタ首相率いる与党連合も昨年12月の選挙前には計画撤回を公約していた。

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しかし、ポンタ首相は組閣後、国際的な投資家保護協定に反する計画撤回に及び腰となる。そこで「個人的には反対だが、議会に諮る」という不可思議な論法で法案を閣議決定した。決定前には公の議論はなされなかった。

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これに反発したのが高等教育を収めた都市の中産層だ。これらの人々は、ロシア・モンタナ個別の問題だけでなく、国民の意見が問われなかった事実を重視している。

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反対運動の盛り上がりに与党連合の足並みがくずれ、閣議では賛成した国民自由党が法案反対の立場を表明。ポンタ首相が所属する社民党もこれに追随する形勢となった。

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もう一つの問題は、国内の改革が2007年の欧州連合(EU)加盟と同時にストップしてしまったことにある。これにより、ルーマニア経済は金融危機の直撃に遭ってしまった。結果的に、以前から経済的地盤の弱い地方では貧困問題がより深刻になっている。

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このように、賛成・反対意見の背景をみると、いずれもその根がルーマニア政治の問題にあると言えそうだ。

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