2014/4/30

総合・マクロ

EUと米、対ロシア制裁を強化

この記事の要約

欧州連合(EU)と米政府は28日、対ロシア制裁の拡大を決定した。ウクライナ東部情勢の緊迫化を受けたもので、米国が経済関係者・企業も合わせて対象とする一方、EUは政府・行政関係者に絞った。ロシアとの経済的な結びつきが強い欧 […]

欧州連合(EU)と米政府は28日、対ロシア制裁の拡大を決定した。ウクライナ東部情勢の緊迫化を受けたもので、米国が経済関係者・企業も合わせて対象とする一方、EUは政府・行政関係者に絞った。ロシアとの経済的な結びつきが強い欧州の微妙な立場が垣間見える。

EUは新たに15人に対して入国禁止・資産凍結措置を適用し、対象者数を48人に増やした。コザク副首相、グラシモフ軍総司令官などロシア高官のほか、セバストポリのメニャイロ知事代行、親ロシア分離主義運動の中心人物などウクライナ関係者が含まれる。

一方、米国はロシア政府高官のほか、ロスネフチ(石油)、ロステクノロジー(兵器・産業)の国営2社の社長をリストに加えた。企業は従来、バンク・ロシアの1社だけだったが、今回、SMP銀行とその子会社、ボルガ(投資会社)、トランスオイル(石油鉄道輸送)、ストロイトランスガス(パイプライン建設)など7社を加えた。また、軍事目的に転用可能な先端技術をロシアに輸出することを禁止した。

米国政府はすでに制裁の効果が現れているとみる。その根拠として、◇ロシアからの資本流出額が年初以来で600億米ドルと、昨年通期の金額をすでに上回った◇ロシア株価指数が15%低下◇通貨ルーブルの対ドル為替相場が9%下落――を挙げている。また、ロシア企業が市場で資金を調達するのが難しくなっているという。

 

 ■東部情勢混迷、OSCE関係者拘束

 

ウクライナ東部では親露派の市庁舎占拠が広がり、ハリコフ市長が銃撃されて重傷を負うなど、事態は混迷を深めている。

外交レベルでは、親露派による欧州安保協力機構(OSCE)の軍事監視団メンバーらの拘束が問題となっている。親露派が実効支配するスラビャンスク市付近で25日、武装勢力がOSCE関係者8人とウクライナ軍関係者5人を拘束したもので、糖尿病を患う1人を解放したものの、29日時点でも12人が「人質」状態にある。親露勢力は、解放の条件としてウクライナに逮捕された親露派活動家の釈放を挙げている。これに対し、欧州側は「無条件での即刻解放」を求めるとともに、ロシア政府に対しても、問題解決に尽力するよう要請している。