2015/1/21

総合・マクロ

中東欧に波紋、スイスフラン上限撤廃で

この記事の要約

スイス中央銀行が15日にスイスフランの上限措置を撤廃したことが、中東欧に波紋を広げている。巨額のフラン建て債務が残っているためで、銀行の不良債権増加や、可処分所得減少による成長鈍化などが懸念される。また、スイスにならった […]

スイス中央銀行が15日にスイスフランの上限措置を撤廃したことが、中東欧に波紋を広げている。巨額のフラン建て債務が残っているためで、銀行の不良債権増加や、可処分所得減少による成長鈍化などが懸念される。また、スイスにならった為替政策をとるチェコでは相場が乱れる可能性もある。

スイスは2009年9月、急激なフラン高を抑制するため、対ユーロ為替相場の最低レートを1ユーロ=1.2フランと決め、フランがこれより高くなった際には無制限の市場介入を実施する措置を導入した。しかし、最近になって各国中央銀行の立場の相違が明らかとなり、フランの上限措置を維持するのは難しいと判断した。

中東欧の外貨建て債務問題はすでに2008年の金融危機で鮮明となった。以来、各国とも債務高の圧縮を進めてきたため、今回のフラン高の影響は比較的小さいと予測される。

最も打撃が大きいのは住宅ローンの4割がスイスフラン建てのポーランドだ。昨年11月末時点のフラン建て債務残高は1,310億ズロチだったが、今回の上限撤廃でズロチが20%下落し、一気に1,570億ズロチに膨らんだ。借入世帯は70万世帯に上る。

ただ、同国の金融監督当局によれば、ズロチが対スイスフランで50%下落しても、金融システムの安定が脅かされることはない。また、契約の金利が低いため、フランが1フラン=5ズロチに上昇しても、ズロチ建て債務の金利水準と同じと指摘する。これに加え、金融危機後の市場規制で、フラン建て融資の条件が厳しくなり、債務者は基本的にフラン高を乗り切れるだけの財力を有している。

奇しくも14日には国際通貨基金(IMF)から弾力的信用枠(FCL)取極め延長の承認も受けており、財政危機に陥る不安はない。

ハンガリーも140億米ドル相当の外貨建て債務の大半がフラン建てだ。ただ、昨年11月、外貨建て債務を割安なレートでフォリント建て債務に転換できる制度が導入された。これまで手続きしていなかった債務者の間でも、今後、制度の利用が広まる見通しだ。気になるのは、これに関連する銀行の負担だが、すでに引当金を積むなど準備を進めてきたため、収支への影響はないという。(1PLN=31.55JPY)