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2014/9/17

総合 - ドイツ経済ニュース

左翼党初の州首相が誕生も

この記事の要約

ドイツ東部のテューリンゲン、ブランデンブルク両州で14日、州議会選挙が実施され、即日開票の結果、ユーロ批判の新政党「ドイツのための選択肢(AfD)」がザクセン州に続いて議会進出を果たした。また、テューリンゲン州では急進左 […]

ドイツ東部のテューリンゲン、ブランデンブルク両州で14日、州議会選挙が実施され、即日開票の結果、ユーロ批判の新政党「ドイツのための選択肢(AfD)」がザクセン州に続いて議会進出を果たした。また、テューリンゲン州では急進左派である左翼党の州首相が全国で初めて誕生する可能性が出ている。

テューリンゲン州ではこれまで、中道右派の大政党であるキリスト教民主同盟(CDU)と中道左派で同州3位(国政レベルでは2位)の社会民主党(SPD)が連立政権を運営してきた。同州は経済が堅調で、東部の州としては失業率も低く、CDUはこれを追い風に得票率を前回(2009年)の31.2%から33.5%へと拡大。有権者の支持を得た格好となった。

一方、連立パートナーのSPDは同18.5%から12.4%へと得票率を大きく落とした。同州のSPD内ではCDUとの連立維持を求める党員と、左翼党との連立に切り替えるべきと主張する党員が対立。選挙戦で左翼党を中心とする連立政権への参加を排除しない立場を打ち出したことで、これを警戒する有権者の票が大量に流失したもようだ。

同州議会の新たな議席配分はCDUが34、左翼党が28、SPDが12、AfDが11、緑の党が6。合計は91で、過半数は46となっている。AfDは他の政党から連立を明確に拒否されており、新政権はCDUとSPDの連立(計46)か、左翼党、SPD、緑の党の3党連立(同46)のどちらかに絞られる。SPDがどちらを選ぶかがカギとなる。

ブランデンブルク州では州与党のSPDが31.9%(前回33.0%)を獲得してダントツ1位を維持したものの、連立パートナーの左翼党は前回の27.2%から18.6%へと大幅に低下。得票率を19.8%から23.0%に伸ばしたCDUに抜かれ3位に転落した。

左翼党は現実味のない政治方針を打ち出す傾向が強く、全国的にみて現状に不満を持つ有権者の批判票の受け皿となっている。このため、与党となり政権を担うようになると人気は低下しやすく、今回はポピュリズム色が極めて強いAfDに票を大量に奪われた格好だ。

同州の議席数は計88で、各党の議席数はSPDが30、CDUが21、左翼党が17、AfDが11、緑の党が6、市民政党BVB/FWが3。BVB/FWは比例区の得票率が議席獲得に必要な5%を下回ったものの、小選挙区で1位となる議員がいたため、州選挙法の規定により議会進出を果たした。同党が1位を獲得したのはベルリン・ブランデンブルク新空港の地元の選挙区で、空港に反対する有権者が支持基盤となった。

ブランデンブルク州の新政権はSPDが中心となって樹立する。連立先となるのは左翼党かCDUのどちらか。SPDは今後、両党との間でそれぞれ協議を行ったうえで、連立交渉先を決定する。

AfDは急速に右傾化

AfDの得票率はブランデンブルクで12.2%、テューリンゲン州で10.6%となり、ともに2ケタ台に乗った。緑の党を除く主要政党から有権者を大量に獲得。特に左翼党、中道右派のCDU、自由民主党(FDP)が痛手を受けた。

AfDは昨年2月の結党当初、経済政策面でリベラル色の強い政党とみられてい。だが、最近は排外的な考えを持つ党員が大量に入党し、急速に右傾化。例えば8月末の州議選で議会進出を果たしたザクセン州のAfDは選挙戦で、外国人の子ども手当や失業手当をドイツ人よりも低くするべきだと極右政党まがいの主張を展開した。

移民が増加すると犯罪が増えたり、生活環境が悪化すると考える市民が支持基盤となっている。CDUの党首であるメルケル連邦首相はこれを踏まえ「政府の良い仕事がAfDに対する最良の回答だ」と発言。AfDに引きずられることなくそうした市民の不安を解消していく考えを示した。

FDPはザクセン州に引き続き、テューリンゲン、ブランデンブルク両州でも議席を失った。同党の凋落の結果、CDUは政権連立のパートナーがSPDか緑の党に限られるというジレンマに直面している。