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2014/9/17

ゲシェフトフューラーの豆知識

事実上の退職者を解雇できるか

この記事の要約

ドイツには高齢者パートタイム(Altersteilzeit)という制度がある。高齢労働者の労働時間を半減するというもので、企業の人員削減の際によく利用される。被用者の側から適用を申請することもできる。 同制度の利用方法は […]

ドイツには高齢者パートタイム(Altersteilzeit)という制度がある。高齢労働者の労働時間を半減するというもので、企業の人員削減の際によく利用される。被用者の側から適用を申請することもできる。

同制度の利用方法は大きく分けて2種類ある。1つはパートタイムの全期間を通して、日々の労働時間を半減するもので「均等分配モデル(Gleichverteilungsmodell)」と呼ばれる。もう1つは「ブロックモデル(Blockmodell)」というもので、パート期間の前半はこれまで通りフルタイムで勤務。後半は給与の支給を受けるものの勤務を全面的に免除され、事実上の退職生活に入る。ほとんどの企業はブロックモデルを採用する。

ではブロックモデルで事実上の退職生活に入り、業務を行っていない被用者を雇用主が解雇することはできるのだろうか。この問題をめぐる係争で、ニーダーザクセン州労働裁判所が8月に判決(訴訟番号:17 Sa 893/13)を下したので、ここで取り上げてみる。

裁判はヴィルヘルムスハーフェン市の職員が同市を相手取っておこしたもの。原告は勤続期間が30年を超え、市営病院の経営者などを務めた。ブロックモデルによる高齢者パートタイムの適用を受けるとの契約を雇用主である市との間で結び、2011年10月1日~14年3月31日の期間は勤務をせずに給与を受け取ることを取り決めた。

事実上の退職生活に入っていた11年10月以降になって、原告が融資で得た資金を本来の目的以外に無断で転用していたことなどが判明した。市当局はこれが重大な義務違反に当たり、雇用関係の維持に欠かせない信頼関係が完全に失われたと主張。原告に即時解雇を通告した。原告はこれを不当として提訴、不払いとなった給与と損害賠償の支払いを求めて提訴した。

2審のニーダーザクセン州労裁は原告の訴えをおおむね認める判決を下した。判決理由で裁判官はまず、被用者がブロックモデルで事実上の退職生活に入っていても、勤務していた時期の重大な違反行為が判明すれば雇用主は即時解雇できると指摘。原告はそうした重大な違反行為を行ったとの判断を示した。ただ、原告が職場に復帰することがないという事情を踏まえると、即時解雇は適切な処分でないと言い渡した。

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