ドイツの自動車大手ダイムラーと化学大手エボニックは1日、両社が設立したリチウムイオン電池関連の合弁会社からエボニックが資本撤退し、エボニックの持ち分をダイムラーがすべて引き継ぐと発表した。電気自動車市場は当初の予想ほど成長しておらず、リチウムイオン電池事業はエボニックにとって赤字事業となっていた。同社は今後、特殊化学事業に注力する方針という。
両社は、リチウムイオン電池セルを生産するリテック・バッテリー(従業員数:380人、出資比率:エボニック50.1%、ダイムラー49.9%)とリテックが生産したセルを加工するドイッチェ・アキュモーティヴ(Deutsche Accumotive)(従業員数:230人、出資比率:エボニック10%、ダイムラー90%)を設立。ドイツ東部のカーメンツに建設した工場で生産している。同工場のリチウムイオン電池は、ダイムラー傘下の超小型車ブランドであるスマートの2人乗り電気自動車「スマート・フォーツー・エレクトリック・ドライブ」に搭載されている。また、シュツットガルト近郊のキルヒハイム/テックには研究開発拠点がある。
■ ダイムラー、単独でリチウムイオン電池事業展開へ
エボニックは昨年10月31日発表した2013年第1-9期の決算報告書の中でリチウムイオン電池事業から撤退する意向を明らかにしていた。撤退を決めた理由については、電気駆動車両(エレクトロモビリティー)市場の需要・供給を見定めた結果、バッテリーセル販売で競争力を高めるためには一定の生産規模を確保する必要があるが、そのためにはさらに投資する必要があり、同社が目指す利益率の達成が困難であると判断した、と説明していた。
ダイムラーは今後、リチウムイオン事業を単独で展開する。今回の措置により経営判断が自由になる利点がある。ただ、業界ではダイムラーが今後、新たな提携先を探すあるいは事業を売却する可能性もあると見る向きもある。