2013/8/26

総合 –EUウオッチャー

アイスランドがEU加盟交渉打ち切りを検討、漁業権めぐる対立で

この記事の要約

EUと加盟交渉を行っているアイスランドの外務省は22日、交渉の打ち切りを検討することを明らかにした。漁業権をめぐるEUとの対立が深まっていることを受けたもの。当初は加盟交渉継続の可否を国民投票で問う方針だったが、政府の判 […]

EUと加盟交渉を行っているアイスランドの外務省は22日、交渉の打ち切りを検討することを明らかにした。漁業権をめぐるEUとの対立が深まっていることを受けたもの。当初は加盟交渉継続の可否を国民投票で問う方針だったが、政府の判断で加盟を断念する可能性が出てきた。

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アイスランドはあえてEU加盟を見送ってきたが、2008年の金融危機で国内経済が大混乱したことから、加盟してEUの支援を受けながら経済再建を進めるのが得策と判断し、2009年7月に加盟を申請。10年6月に加盟交渉を開始していた。これまでに35に上る交渉分野のうち、27分野で交渉を開始し、うち11分野が完了している。

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加盟に対する風向きが変わったきっかけは、経済危機の終息と、EUとのサバ漁をめぐる対立の激化。欧州の大西洋北東海域のサバ漁をめぐっては、EUとノルウェーが資源管理の観点から漁獲枠を定めてきたが、アイスランドは豊漁などを理由に漁獲枠を一方的に従来の6.5倍にあたる13万トンに拡大した。これにEUが反発し、制裁発動を検討する事態となっている。

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これを受けてアイスランドは、国内経済の柱である漁業の統制権を失ってまでEUに加盟することに反対する気運が広がり、政府は今年1月、4月の総選挙が終了するまで加盟交渉を凍結すると発表。総選挙ではEU加盟を推進してきた与党の社会民主同盟が大敗し、加盟に批判的な独立党と進歩党の連立政権が発足した。新政権は5月、交渉凍結を続けた上で、加盟交渉を進めることの是非を問う国民投票を実施する方針を打ち出していた。

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世論調査ではEU加盟反対派が優勢で、国民投票では交渉打ち切りが支持されるのが確実な情勢だ。このため政府は、国民投票を経ずにEU加盟申請そのものを撤回しても問題はないと判断したもよう。外務省は声明で、政府が2009年の総選挙で約束したEU加盟を撤回することに憲法上の問題はないとする答申を専門家が出したことから、加盟交渉打ち切りを検討することを決めたとしている。

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