2013/10/7

環境・通信・その他

ICAOが温効ガス規制導入で合意、域外航空会社へのEU規制適用は拒否

この記事の要約

国連の専門機関である国際民間航空機関(ICAO)はカナダのモントリオールで開いた総会最終日の4日、航空機の温室効果ガス排出削減に向け、2020年までに国際的な規制の枠組みを導入することで合意した。ICAOによると、温暖化 […]

国連の専門機関である国際民間航空機関(ICAO)はカナダのモントリオールで開いた総会最終日の4日、航空機の温室効果ガス排出削減に向け、2020年までに国際的な規制の枠組みを導入することで合意した。ICAOによると、温暖化対策での国際的な合意は主要産業では初めて。ICAO理事会で市場メカニズムに基づく規制の枠組みについて検討を進め、16年の次回総会で具体的な内容を決定する。

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世界全体の二酸化炭素(CO2)排出量に占める航空部門の割合は現時点で2%程度だが、新興市場などを中心に航空輸送の需要増が続いていることから、ICAOは50年までにこの割合が最大6倍に拡大すると予測している。EUは世界の温暖化対策を主導する立場から、08年にEU排出量取引制度(EU-ETS)に航空部門を組み込む方針を打ち出した。域内の空港を発着するすべての航空各社を対象に、過去の実績に基づいてCO2の排出枠を割り当て、実際の排出量が枠を超えた場合は超過分の排出権を市場で購入するか、制裁金の支払いを求めるという内容。第1弾として、11年1月からEU域内の路線を結ぶ航空機に新規制を適用し、12年1月からは域内の空港を発着して域外と結ぶ国際線の航空機に対象を拡大した。

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しかし、国際間の合意がないまま域外の航空会社に域内ルールを適用するEUのアプローチに対し、米国、中国、インド、ロシアなどが国際法に抵触するとして強く反発。このため欧州委は昨年11月、域内と域外を結ぶ国際線の航空機に対する規制を1年間、凍結すると発表。今回のICAO総会で航空機の排出規制に関する国際的な合意をまとめるよう強く要求し、合意形成に至らなければEU独自の規制を再開すると警告していた。

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欧州委はICAO総会にあたり、国際的な合意を条件に航空部門に対するEU-ETSの適用範囲を縮小する方針を示唆する一方、国際的な規制の枠組みが構築されるまでは域外の航空会社に対してEUルールを適用することは論理的に可能と主張していた。しかし、3日の全体会議では、EUが域外の航空会社に対して域内ルールを適用することはできないとする決議案が賛成多数(賛成97、反対39、棄権9)で承認され、EUは国際交渉の場で戦略の見直しを迫られることになった。

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ICAO総会でEU代表団を率いた欧州委のカラス副委員長は「貿易相手国との決定的な対立を避けることができた。長期にわたる厳しい交渉の末、航空業界の温暖化対策で国際的な合意が形成されたことを心から歓迎する」とコメント。一方、ヘデゴー委員(気候変動担当)は「より多くの国にEUのスキームを認めてもらいたかったが、全体としてみれば大きな進展があった。今後は加盟国および欧州議会と協議し、EU-ETSとの関連で20年までの規制方針を決定することになる」と述べた。

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