2014/1/13

産業・貿易

銀行制度改革案が緩やかな内容に、高リスク業務分離は各国に裁量権

この記事の要約

欧州委員会は月内にも金融システムの安定化に向けた域内銀行制度の改革案を打ち出す方針だが、銀行の預金業務とリスクの高い業務の分離や自己勘定取引の制限など、柱となるルールは当初の構想に比べて緩和され、全体として米国のボルカー […]

欧州委員会は月内にも金融システムの安定化に向けた域内銀行制度の改革案を打ち出す方針だが、銀行の預金業務とリスクの高い業務の分離や自己勘定取引の制限など、柱となるルールは当初の構想に比べて緩和され、全体として米国のボルカールールより緩やかな内容となるもようだ。

銀行制度改革はEUが金融危機以降に進めてきた金融規制改革の最終章となるもので、欧州委はフィンランド中央銀行のリーカネン総裁を座長とする有識者グループが2012年にまとめた報告書(リーカネン・レポート)を土台に規制案の策定を進めてきた。同レポートは2008年の金融危機について、複雑な金融商品や不動産関連融資などの取引における過度のリスクテイクが決定的な要因になったと指摘。銀行システムの「最も重要な部分」を守るため、同じ銀行グループ内で「リスクの高い特定の業務と預金業務を法的に分離する必要がある」と結論づけている。

英フィナンシャル・タイムズ紙が入手した欧州委の原案によると、預金業務とリスクの高い業務の分離を一律に義務付けるルールは導入が見送られ、代わりに各国の金融監督当局に対し、個々の銀行による特定の取引がシステミックリスクを引き起こす可能性があるかどうかの判断に基づいて、個別に高リスク業務の分離を命じる権限が与えられる。一方、自己資金を元手に市場の取引に参加する自己勘定取引に関しても規制対象が狭められ、「顧客向けの業務を伴わない、銀行が純粋に自らの利益を得るために行う取引」のみ禁止される。さらにEU各国が発行するソブリン債の取引は規制対象とならず、小規模銀行は高リスク業務の分離ルールが適用除外となる。

欧州委は1月下旬または2月に銀行制度の改革案を公表する予定だが、採択は早くて15年末になるとみられており、自己勘定取引の禁止ルールは18年、リスクの高い業務の分離に関するルールは20年の導入が見込まれる。