2014/3/24

総合 –EUウオッチャー

銀行破綻処理の一元化で最終合意、予定通り15年に始動へ

この記事の要約

EU加盟国と欧州議会の代表は20日、ユーロ圏の銀行の破綻処理一元化の制度設計について最終合意した。昨年末のEU首脳会議で合意した案に反発する欧州議会に加盟国側が歩み寄り、破綻処理に使う基金の完全整備前倒しや、処理決定に加 […]

EU加盟国と欧州議会の代表は20日、ユーロ圏の銀行の破綻処理一元化の制度設計について最終合意した。昨年末のEU首脳会議で合意した案に反発する欧州議会に加盟国側が歩み寄り、破綻処理に使う基金の完全整備前倒しや、処理決定に加盟国が介入する余地を狭めることを盛り込んだ妥協案がまとまった。これによって難航していた調整が完了し、銀行同盟創設の第2段階となる破綻処理の一元化が予定通り2015年1月に始動することになった。

「単一破綻処理メカニズム(SRM)」と呼ばれる同制度は、経営危機に陥ったユーロ圏の銀行の破綻処理を公的資金を使わずに、迅速、公正に進めるのが狙い。「破綻処理委員会」と「単一破綻処理基金」の創設が2本柱となっている。

銀行同盟の第1段階として今年11月に始動する銀行監督の一元化とともに、ユーロ圏の金融システム安定に向けた大規模な制度改革となる。

同制度は、監督一元化によって欧州中央銀行(ECB)の監督対象となる銀行に資金繰りの行き詰まりなどの問題が生じた際に、破綻処理委が対応策を協議し、救済して再建するか閉鎖するかを決め、銀行の拠出によって創設される単一破綻処理基金を使って処理を進めるという仕組み。当該銀行の債権者に最初に負担させる「ベイル・イン」と呼ばれるシステムを導入し、これでは不十分な場合に基金を投入することになる。

昨年12月の首脳会議で加盟国が合意した制度設計案は、破綻処理基金について、各国が自国銀行向けに創設した基金を2026年までの10年間で段階的に統合し、圏内のあらゆる銀行の破綻処理に使える総額550億ユーロの単一基金を設けるという内容。これに関して欧州議会は、基金が完全に整備されるまでの期間が長すぎるとして、前倒しを求めていた。

加盟国と欧州議会は、完全整備の期間を8年に短縮することで合意した。欧州議会側はさらに大幅な短縮を望んでいたが、創設1年目に基金の40%を共通で使えるようにし、これを2年後に60%まで拡大するという譲歩を加盟国側から引き出したことで歩み寄った。一方、基金の移行期間中に資金が不足した場合については、将来の銀行の拠出を担保に金融市場で借り入れるほか、EUの金融安全網である「欧州安定メカニズム(ESM)」から資金融通を受けることが認められるはずたったが、完全整備を早める代わりにESMの資金投入を避けることで合意した。

もうひとつの焦点である破綻処理の決定システムについては、欧州委員会が昨年7月に発表した原案は、ECBの通告を受けて破綻処理委が対応策をまとめ、欧州委に勧告するが、最終的には欧州委が決定権を持つという単純なものだった。しかし、加盟国の合意案では、加盟国(欧州理事会)が大きな決定権を持つ方向に修正されたことから、欧州議会は各国の利害が絡んで処理決定が大きく遅れるとして是正を要求していた。

今回の合意では、破綻認定は原則的にECBの判断に委ねることを決定。また、破綻処理に関する欧州委の決定について、基金の投入額が破綻処理委の勧告と異なるなど例外的なケースを除いて、加盟国による承認を不要とすることでも合意した。

破綻処理一元化をめぐっては、調整の難航によって欧州議会が選挙で解散する5月までに関連法案が成立せず、制度始動が大幅にずれ込み、11月に銀行監督が一元化されても破綻処理のシステムが整わないため機能不全に陥る恐れがあった。ようやく合意にこぎ着けたことで、欧州議会は4月の本会議で法案を採択する見通しだ。