欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/1/12

EU産業・貿易

欧州委がTTIP文書案を公表、競争政策・食品安全など8分野

この記事の要約

欧州委員会は7日、米国との環大西洋貿易投資連携協定(TTIP)交渉でEUが提案した協定文書の草案(textual proposal)を一部公表した。欧州委が通商協定の文書案を公表するのは初めて。EU内では環境や食品安全な […]

欧州委員会は7日、米国との環大西洋貿易投資連携協定(TTIP)交渉でEUが提案した協定文書の草案(textual proposal)を一部公表した。欧州委が通商協定の文書案を公表するのは初めて。EU内では環境や食品安全などの分野でTTIPに反対する意見が根強く、交渉の透明性を問題視する向きもあることから、広く情報を開示して協定への支持拡大を図る必要があると判断した。

今回、欧州委が公表したのは競争政策、食品安全、貿易の技術的障壁、政府間の紛争解決(GGDS)など8分野の協定文書案。このほかエンジニアリング、自動車、持続可能な開発の3分野についてEUの立場をまとめたポジションペーパーを併せて公表した。さらに専門知識を持たない一般のEU市民が情報にアクセスしやすくするため、各項目を分かりやすく解説した「手引き」や用語集、データ集も同時に公開している。

欧州委のマルムストロム委員(通商担当)は会見で「TTIP交渉の成果や合意に至っていない事柄について多くの誤解や作り話が蔓延している。EUが何を提案し、何を提案していないかについてすべての人が理解できるようにすることが重要だ」と指摘。今後も交渉の進捗などについて積極的に情報を開示する方針を強調した。

EUは年内の交渉妥結を目指しているが、消費者団体や環境保護団体などを中心に食品安全、農業、環境などの分野でEUが大幅な譲歩を迫られるとの懸念が高まっている。また、ドイツは投資家保護を目的とするISDS(投資家対国家の紛争解決)条項を協定に盛り込むことに難色を示しており、今春以降に本格化するEU内での調整は難航が予想される。ただ、年内に妥結できなかった場合、2016年は米大統領選が控えているため、TTIP交渉は17年以降にずれ込むとの見方がある。