欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/1/12

EUその他

キプロス航空が運航停止、公的支援のEU法違反で

この記事の要約

キプロス政府は9日、経営難に陥った国営キプロス航空の存続が困難になったとして、10日以降の運航を全面的に停止すると発表した。欧州委員会が9日、同社に対する公的支援策の一部がEUの国家補助規定に違反するとの調査結果をまとめ […]

キプロス政府は9日、経営難に陥った国営キプロス航空の存続が困難になったとして、10日以降の運航を全面的に停止すると発表した。欧州委員会が9日、同社に対する公的支援策の一部がEUの国家補助規定に違反するとの調査結果をまとめ、同国政府に約6,500万ユーロの回収を命じたことを受けた措置。キプロス航空は声明で、同日の最終便を以てすべての業務を停止し、清算手続きに入る方針を明らかにしている。

キプロス航空は1947年の設立で政府が株式93.7%を保有する。同社は英国便やギリシャ便など主要路線でライバルとの競争に直面し、急速に経営が悪化。13年には国内の金融危機の影響で経営悪化が一段と深刻化し、赤字が前年の約2倍の5,580万ユーロに膨らんだ。同社は政府による金融支援のほか、機体の売却や英ヒースロー空港の発着枠の譲渡などで運転資金を確保してきたが、欧州委が昨年2月、同社に対する公的支援策をめぐり本格調査に乗り出したことを受け、政府は売却による民営化を模索していた。

欧州委が問題視していたのは、キプロス政府が12年と13年に実施した総額1億ユーロを超える資本注入や融資などの支援策。EU競争法は経営難に陥った企業に対する公的支援について、対象企業の長期的再建が可能な場合に限り、健全な競争を妨げない範囲で10年間で1回のみ認めるとのルールを定めている。欧州委はこれまでの調査から◇キプロス航空はすでに07年に約9,500万ユーロの再建支援を受けている◇同社の再建計画は「非現実的な想定」に基づいており、航空市場の現状を十分に反映していない◇EUは公的支援を受ける企業に対し、再建コストの少なくとも半分を自社で負担するよう求めているが、キプロス航空は明らかにこの条件を満たしていない――と指摘。継続的な公的支援がなければ同社の長期的な再建は実質的に不可能であり、政府が12年から13年にかけて実施した支援策の一部はEUルールに違反する不当な補助金と結論づけた。

欧州委の決定を受け、キプロスのゲオルギアデス財務相は「キプロス航空の存続はもはや経済的に不可能だ」とコメント。ディミトリアディス通信・公共事業担当相は「状況の変化を残念に思うが、航空券を購入した消費者のため、代替となる空の便の確保に全力を尽くす」と強調。そのうえで、政府はキプロス航空の業務を引き継ぐ「受け皿」を模索しており、新会社の設立を視野に同社の商標権を購入済みであることを明らかにした。