中・東欧、CIS諸国、ロシアに特化した情報誌

2011/6/8

CIS諸国

ロシアなど旧ソ連6カ国、ベラルーシに30億ドル融資

この記事の要約

経済的混乱に揺れるベラルーシは危機の打開に向けて、ロシア、カザフスタンなど旧ソ連6カ国から成るユーラシア経済共同体から30億米ドルの融資を受ける。期限は10年。ただ、危機の克服には総額90億ドルの資金が必要とみられており […]

経済的混乱に揺れるベラルーシは危機の打開に向けて、ロシア、カザフスタンなど旧ソ連6カ国から成るユーラシア経済共同体から30億米ドルの融資を受ける。期限は10年。ただ、危機の克服には総額90億ドルの資金が必要とみられており、国際通貨基金(IMF)による支援が実現するかどうかが今後を占う大きな鍵となる。

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ユーラシア経済共同体を構成するロシア、カザフスタン、ベラルーシ、キルギスタン、タジキスタン、ウズベキスタンの財務相は4日、ミンスクで会談し、共同体の危機対策基金から30億ドルを融資することを決定した。条件として、向こう3年で75億ドル相当の国営企業民営化を実施することなどが求められる。

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80億ドルの初回融資は今月中に実施する。加えて、年末までに4億ドル、来年に8億ドル、13年に10億ドルを融資する。ベラルーシは当初3年間、返済が猶予される。

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国営企業の民営化では対象企業は指定されていない。アナリストらは、投資家の高い関心が見込まれる企業として世界3位のカリ肥料メーカー、ベラルースカリを挙げる。売却規模は最大200億ドルと推定されており、消息筋によると、すでに中国やロシアの投資家と交渉が始まったもようだ。また、ロシアは国策に沿い、製油所などの資源関連会社やガスパイプラインを運営するベルトランスガスの資本を獲得したい考えだ。ベルトランスガスはベラルーシ国内のほか、ロシア産ガスを欧州に送るパイプラインも操業しており、ガスプロムがすでに資本の50%を握る。ガスプロムは完全買収を狙っているが、ベラルーシ政府はこれまで拒否してきた。

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■IMFに支援要請

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ベラルーシ政府は今月に入り、IMFに最大80億ドルの融資を要請した事実を明らかにした。ハルコヴェツ財務相は、ユーラシア経済共同体による融資条件はIMFの条件も満たすものとの観測に立ち、IMFからの支援が得られると期待感を示している。ただ、アナリストらは09~10年のIMF融資(35億ドル)の条件としてベラルーシ政府が実行した財政緊縮策が、昨年12月の大統領選挙前の社会保障支出増加で水の泡と帰した事実を指摘。新規支援に当たってIMFがより厳しい条件を求めると予想している。また、大統領選を機にルカシェンコ大統領が反対派弾圧を強めていることもベラルーシに不利に働くとみられる。

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■食品価格凍結

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ベラルーシ政府は31日、政令を通じて食品価格を凍結した。通貨危機に端を発する経済的な混乱の広がりを食い止める狙い。外貨不足による金融危機を受け、中央銀行が24日に自国通貨の切り下げを実施して以来、国民の間では小麦、砂糖など食品や日用品などを購入する動きが強まっている。

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価格凍結の対象となるのは、魚、茶、コーヒー、ソーセージ、チーズ、青果などで、期限は今月末まで。食品の値上がりは顕著で、3月以来、2倍になったものもある。

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ベラルーシでは、ルカシェンコ大統領が昨年12月の再選に向けて公務員賃金を50%引き上げるなど、財政支出を拡大したことが主因となり経常赤字が急速に拡大した。外貨準備高は3月、過去1年半で最低水準に落ち込んだ。スタンダード・プアーズは3月15日にベラルーシの格付けを投機級の「シングルB」に格下げしたほか、先月27日にはアウトルックを「ネガティブ」に変更している。

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中銀は先月24日、自国通貨ベラルーシ・ルーブルの対米ドル為替レートを36%切り下げ、1ドル=4.977ルーブルに設定した。ただ、闇レートでは現在も1ドル6,000ルーブル前後で取引されており、通貨の下落が続く可能性がある。

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また、中銀は30日、政策金利であるリファイナンス金利を6月1日付けで16%へと2ポイント引き上げることを決定した。利上げは今年に入って4回目で、直近では先月18日に実施したばかり。ただ、イタリア最大手銀行のウニクレディトでは最終的に25%への引き上げが必要になると予想している。

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