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2011/8/3

チェコ・スロバキア

チェコの格付けを据え置き・見通しは安定的=フィッチ

この記事の要約

米格付け会社フィッチは7月25日、チェコの長期外貨建て発行体デフォルト格付け(IDR)を「A+」、長期自国通貨建てIDRを「AA-」で据え置いた。長期IDRの見通しは安定的。また、短期外貨建てIDRは「F1+」、カントリ […]

米格付け会社フィッチは7月25日、チェコの長期外貨建て発行体デフォルト格付け(IDR)を「A+」、長期自国通貨建てIDRを「AA-」で据え置いた。長期IDRの見通しは安定的。また、短期外貨建てIDRは「F1+」、カントリーシーリングは「AA+」に据え置いた。

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フィッチの欧州新興市場部門のアソシエート・ディレクターを務めるミシェル・ナポリターノ氏は声明で、格付けを据え置きは「財政状況の改善と年金制度改革の進展を反映したもの」とする一方で、「連立政権内部における対立が、財政赤字削減と構造改革の妨げになる可能性がある」と警戒感を示した。

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チェコの財政赤字は2009年に対国内総生産(GDP)比で5.8%だったが、10年は4.7%に縮小した。フィッチでは11年は4.2%、12年に3.8%に改善すると予測している。一方、政府債務は金融危機以降に増加傾向を強めており、対GDP比率は07年の29%から10年には38.5%に上昇した。フィッチは債務比率が13年の43%をピークに、14年以降は低下に向かうとの見通しを示している。ただ、ナポリターノ氏は、チェコでは急速に進む高齢化が財政の圧迫要因となっており、医療・年金改革が最優先課題だと指摘。年金の支給開始年齢を65才に引き上げるなどの一部で進展は見られるものの、連立政権内では改革を巡る摩擦が生じており、特に医療分野で抜本的な改革が実施されるかどうかは不透明だとしている。

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チェコ経済は輸出主導で回復を遂げており、11年1-3月期の実質GDPは前年同期比2.8%増加した。フィッチでは11年通年の成長率を2.3%、12年は2.0%、13年は3.0%と予測している。一方で、中期的には高齢化による労働人口の減少やビジネス環境の貧弱さが成長の制約要因となると指摘。国際競争力の強化に向けた構造改革が成長ポテンシャルを押し上げるために必要だとの見方を示している。

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