2014/6/11

総合・マクロ

ブルガリアとセルビア、サウス・ストリームの着工延期

この記事の要約

ロシア産の天然ガスをウクライナを迂回して南欧と中欧に運ぶ「サウス・ストリーム」パイプライン計画に関連し、ブルガリア政府は8日、同国区間の着工を延期すると発表した。ロシアとの関係悪化を受けて同計画の見直しを狙う欧州連合(E […]

ロシア産の天然ガスをウクライナを迂回して南欧と中欧に運ぶ「サウス・ストリーム」パイプライン計画に関連し、ブルガリア政府は8日、同国区間の着工を延期すると発表した。ロシアとの関係悪化を受けて同計画の見直しを狙う欧州連合(EU)の圧力に屈した形だ。オレシャルスキ首相は、交渉を通じてEUの懸念を払拭したいと話している。ブルガリアの決定を受けて、セルビアも計画の一時凍結を発表した。

EUの欧州委は3日、ブルガリアに対してサウス・ストリーム計画の凍結を正式に要求した。◇エネルギー分野における生産事業と輸送事業の分離を義務付ける欧州法に違反◇工事入札の不正が疑われる――が理由だ。バローゾ欧州委員長はこれに先立ち、ブルガリアが計画を続行すれば違反調査手続きを開始すると予告していた。

サウス・ストリームはロシアから黒海海底を経由し、ブルガリアで◇セルビア、ハンガリー、スロベニア、オーストリア◇ギリシャ、イタリア――の2つのルートに分岐して欧州ガス網と結合する予定。ロシアは対欧州輸出におけるウクライナ・パイプラインへの依存軽減を狙っている。

一方でブルガリアとセルビアは天然ガス需要のほぼ100%をロシアに依存する。2009年のロシア・ウクライナ・ガス紛争で欧州への供給が減少した際に大きな影響を受けた経験がある。このため、ウクライナ情勢に左右されない供給路として、サウス・ストリームをぜひとも稼動させたい立場だ。

セルビアはEU加盟国ではないが、現行計画ではブルガリア区間の建設がセルビアでの工事実施の前提となる。地元タンユク通信がエネルギー省筋の情報として報じたところによると、計画は今後、ロシアとEUの合意の枠内で実施していくという。(東欧経済ニュース6月4日号「欧州委、ブルガリアに違反調査手続き開始を予告」を参照)