2015/6/17

総合・マクロ

新ナブッコ計画が始動か、OMVがガスプロムと水面下で交渉

この記事の要約

2013年にとん挫したナブッコ・パイプライン計画が、新たな形で息を吹き返す可能性が浮上している。計画を主導していたオーストリアのエネルギー大手OMVが、ロシア産ガスをトルコ国境からウィーンまで運ぶ新計画を進める方向でガス […]

2013年にとん挫したナブッコ・パイプライン計画が、新たな形で息を吹き返す可能性が浮上している。計画を主導していたオーストリアのエネルギー大手OMVが、ロシア産ガスをトルコ国境からウィーンまで運ぶ新計画を進める方向でガスプロムと交渉しているもようだ。11日付のオーストリア日刊紙『プレッセ』が報じた。

旧ナブッコ計画は、アゼルバイジャンなどカスピ海地域の天然ガスをロシアを迂回して欧州へ運ぶパイプラインプロジェクト。ロシアへの天然ガス依存を弱めたい欧州連合(EU)の後押しを得て進められていたものの、2013年に競合するアドリア海横断パイプライン(TAP)がアゼルバイジャン産天然ガスの輸送路として選ばれ、中止に追い込まれた。

今回の新ナブッコ計画は、ガスプロムが計画する「ターキッシュ・ストリーム」をウィーンまで延長するもの。トルコから先のルートがギリシャ経由となるか、従来と同じくブルガリア-ルーマニア-ハンガリー経由となるのか現時点では未知数だ。ロシア産ガスの欧州向け供給を巡っては、EUがガスプロム側に対しトルコを経由しないブルガリアルートを選ぶよう水面下で働きかけているという情報もあり、混とんとしている。

新ナブッコ計画では中期的にロシア以外の天然ガス産出国も視野に入れている。対イラン経済制裁が解除される可能性が高まり、欧州が天然ガス埋蔵量で世界2位の同国から資源を輸入するシナリオが現実的になりつつあるためだ。

イラン側も欧州への供給に向けて100億米ドル(89億ユーロ)をパイプライン建設に投資する用意を示している。トルコを経由する案もあり、これが実現すれば新ナブッコ・パイプラインは旧計画の目的である「ロシア依存からの脱却」を支える柱の一つともなりうる。