2015/6/17

コーヒーブレイク

ビール大国でシードルが人気~チェコ、スロバキア

この記事の要約

中欧地域でシードル(リンゴ酒)の人気が急上昇中だ。特に、ビールで有名なチェコやスロバキアで、苦味を嫌う新しい消費者層の強い支持を受けている。大手ビール醸造所もシードル生産に乗り出した。 小規模醸造所ユジュネー・サディのユ […]

中欧地域でシードル(リンゴ酒)の人気が急上昇中だ。特に、ビールで有名なチェコやスロバキアで、苦味を嫌う新しい消費者層の強い支持を受けている。大手ビール醸造所もシードル生産に乗り出した。

小規模醸造所ユジュネー・サディのユルコヴィッチ社長は、2013年、英国から帰国した友人の話をきっかけにシードルの醸造・販売を始めた。オルタナティブ系のミュージック・フェスティバルで売ったところ好評で、今ではブラチスラバのバーやレストランに納入している。

外国滞在経験があったり、新しいものに興味がある若い中産層が愛飲家の中心だ。また、ビールよりやや甘い味わいが苦味を嫌う人に「おいしい!」と受け入れられているという。

ロンドンの調査会社ユーロモニター・インターナショナルによると、東欧におけるシードルの販売量は過去4年で14.6%拡大した。チェコに限ると、4万リットルから368万リットルへと実に92倍の大躍進。シェア低下を恐れるビール大手は、次々と果汁入りやレモン風味のビールを市場投入するなど対応を迫られている。

また、シードル人気を商機とみて醸造に乗り出したビールメーカーもある。ハイネケンはスロバキア子会社ズラティ・バシャントのフルバノヴォ工場で、中欧市場向けに英国の人気シードル「ストロングボウ」を醸造する計画を進めている。400万ユーロの設備を完了し、この夏に出荷を開始する。SABミラーは、チェコ子会社プルセニュスキー・プラズドロイ(「ピルスナー・ウルケル」)で、すでに2013年から「キングズウッド」を生産している。今年は出荷量が昨年の5割増しになる見通しだ。

ビール会社は、シードル人気をビール消費者ではない新しい顧客を獲得するチャンスと位置付けている。

一方、ユジュネ―・サディのユルコヴィッチ社長も新しい醸造ラインの投入で生産量を月1万リットルに引き上げる計画だ。大手の参入にも、「先発の強みと品質の良さを生かして」ニッチの需要を満たしていくと、余裕の構えをみせている。