欧州経済の中心地ドイツに特化した
最新の経済・産業ニュース・企業情報をお届け!

2015/11/11

ゲシェフトフューラーの豆知識

同僚への暴力行為、即時解雇にならないことも

この記事の要約

重大な理由がある場合、雇用主は被用者を即時解雇できる。これは民法典(BGB)626条に記されたルールであり、同僚への暴力行為も原則的に即時解雇の理由となる。ただ、ケースによっては即時解雇が妥当でないこともある。そんな判断 […]

重大な理由がある場合、雇用主は被用者を即時解雇できる。これは民法典(BGB)626条に記されたルールであり、同僚への暴力行為も原則的に即時解雇の理由となる。ただ、ケースによっては即時解雇が妥当でないこともある。そんな判断をマインツ州労働裁判所が7月に下した判決(訴訟番号:6 Sa 22/15)で示したので、ここで取り上げてみる。

裁判は物流会社の男性社員が同社を相手取って起こしたもの。同社員は2014年1月9日、当時の婚約者で同僚だった女性と出勤途中の車内で口論となった。言い争いは会社の駐車場でエスカレートし、同男性は婚約者の女性を突き飛ばし、ボンネットの上に倒した。

被告企業は当事者と目撃者から事情を聴取したうえで、原告に対し1月20日付の文書で即時解雇を通告。念のために解雇予告期間を設けた通常解雇(解雇日は2月28日)も通告した。

原告はこれを不当として提訴したものの、1審のコブレンツ労働裁判所は即時解雇は妥当だとの判断を示した。

一方、2審のマインツ州労裁は、同僚への暴力行為では即時解雇が原則的に可能だとしながらも、個々のケースでは雇用関係を早急に解消したい雇用主(被告)の利害と、その継続を求める被用者(原告)の利害を比較考量したうえで総合的に判断しなければならないと指摘。原告に対する即時解雇は行き過ぎた処分であり、通常解雇が妥当だとの判断を示した。

具体的には、被告は◇従業員の安全を守る雇用主の責任◇社内で暴力事件が起きたことで被告企業の評価が低下する恐れ◇原告の雇用を継続することで社内の勤務環境が悪化する――などを即時解雇の根拠として挙げるが、同僚女性に対する原告の暴力行為は影響がそれほど大きくないとの見方を示した。また、◇暴力行為のきっかけとなった原告と同僚女性の争いは私的なものであり業務に関係がなかった◇原告には子供の扶養義務がある――という事情も原告に有利に働くとしている。

最高裁への上告は認めなかった。

企業情報
経済産業情報
COMPANY |
CATEGORY |
KEYWORDS |