2015/6/10

総合・マクロ

トルコ議会選挙で与党敗北、大統領の権限強化ならず

この記事の要約

トルコで7日行われた議会選挙(定数:550)は即日開票の結果、与党・公正発展党(AKP)が得票率を大きく減らして敗北した。同党は大統領の権限強化に向けて5分の3の議席獲得を目指していたが、過半数議席にも届かず、約13年間 […]

トルコで7日行われた議会選挙(定数:550)は即日開票の結果、与党・公正発展党(AKP)が得票率を大きく減らして敗北した。同党は大統領の権限強化に向けて5分の3の議席獲得を目指していたが、過半数議席にも届かず、約13年間続くエルドアン体制への不満が浮き彫りになった。投票率は83.92%だった。

中央選管が9日発表した得票率は、AKPが40.87%で11年の前回選挙から9ポイントも減らした。注目されたクルド人系の国民民主主義党(HDP)は13.12%と阻止条項の規定する10%をクリア。議会入りを果たし、AKP議席の大幅減につながった。最大野党の共和人民党(CHP)は24.95%、右派の民族主義者行動党(MHP)は16.29%だった。

4党の議席配分はAKPが258議席(改選前:312議席)、CHPが132議席(125議席)、MHPが81議席(52議席)、HDPが79議席(29議席)となる。

今回の選挙では、AKPが330議席以上を獲得し、エルドアン大統領の狙う大統領の権限強化に道を開くかが焦点となった。HDPが阻止条項をクリアできるかが議席配分のカギを握るため、同党の得票率に注目が集まった。HDPが大幅に躍進した結果、AKPの議席は過半数にも届かず、安定した政権運営に連立パートナーが必要な状況になっている。

エルドアン大統領は2002年から昨夏まで首相を務め、以後、大統領の座にある。大統領官邸の建設や政府公用車の調達に巨額の費用がかかったことや、大統領の家族にまで及ぶ政府要人の汚職疑惑とそのもみ消し、経済成長の勢いが落ちていることなどが支持の低下につながった。また、昨年に「イスラム国(IS)」がトルコ国境に近く、クルド人が住むシリア・クバネ市を攻撃した際、トルコ政府がクルド人支援を長く拒んだことも影響した。

HDPは少数民族の権利保護をうたい、クルド系住民を主な支持基盤としてきた。最近は「民族政党」からの脱却を目指しており、今回の候補者リストも女性が半数を占めるなど、トルコの民族・宗教・社会的な多様性を体現している。結果として左派やリベラル派のエルドアン批判票を集め、議会での躍進を実現した。