2014/2/3

総合 –EUウオッチャー

英上院がEU離脱の国民投票法案を否決、事実上の廃案に

この記事の要約

英上院は1月31日、EU離脱の是非を問う国民投票の実施に関する法案を反対多数で否決した。与党・保守党と連立を組む自民党と野党・労働党が反対票を投じた。この結果、4月までの会期中に国民投票の実施を明文化した法案が成立する可 […]

英上院は1月31日、EU離脱の是非を問う国民投票の実施に関する法案を反対多数で否決した。与党・保守党と連立を組む自民党と野党・労働党が反対票を投じた。この結果、4月までの会期中に国民投票の実施を明文化した法案が成立する可能性は事実上、消滅した。ただ、キャメロン首相は法案の成否にかかわらず、国民投票を実施する方針を改めて表明しており、保守党からは下院の優位性を利用して上院での採決を回避し、次期総選挙までに新たな法案を成立させる構想も出ている。

英国ではユーロ危機が長引くなかでEU離脱論が高まり、キャメロン首相は昨年1月、2015年の次期総選挙で保守党が勝利した場合、EUとの間で英国の加盟条件について再交渉したうえで、17年末までにEU残留の是非を問う国民投票を行うと表明した。しかし、EU離脱を唱える保守党議員は国民投票の実施を法律として明文化するよう要求。一方、連立を組む自民党はEU離脱に反対の立場をとっているため、保守党の若手議員が議員立法の形で「国民投票法案」を提出し、昨年7月から審議が続いていた。

キャメロン首相は31日、仏オランド大統領との首脳会談後に開いた共同会見で上院での投票結果に触れ、法案の進捗状況にかかわらず、国民投票を実施する方針に変更はないと強調。「国民投票の実施を確実にする道筋の1つは、次期総選挙で保守党に投票することだ」と発言した。

一方、保守党のジェイムス・ウォートン議員は自らまとめた法案が事実上の廃案となったことを受け、「上院での労働党と自民党の共謀によって重要な法案がつぶされた。英国の将来を左右する重大な課題について国民に選択肢を与えることができるのは、保守党だけだということがより鮮明になった」とコメント。今後のシナリオとして、保守党内で新たな法案の策定作業に入り、場合によっては上院での審議・採決を回避して総選挙前の成立を目指すことも可能との考えを示した。