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2014/11/10

総合 – 欧州経済ニュース

ユーロ圏がギリシャに予防的融資枠設定へ、金融支援終了後の危機対応で

この記事の要約

ユーロ圏は6日に開いた財務相会合で、債務危機対応の金融支援が今年末に期限を迎えるギリシャについて、支援終了後もユーロ圏が予防的融資枠を設定する方針で一致した。これによってギリシャで来年以降に不測の事態が生じても即座に対応 […]

ユーロ圏は6日に開いた財務相会合で、債務危機対応の金融支援が今年末に期限を迎えるギリシャについて、支援終了後もユーロ圏が予防的融資枠を設定する方針で一致した。これによってギリシャで来年以降に不測の事態が生じても即座に対応し、危機拡大を封じ込めるようにする。

信用不安で深刻な債務危機に陥ったギリシャは、ユーロ圏と国際通貨基金(IMF)から2010年に1,100億ユーロ、12年に1,300億ユーロの緊急金融支援を取り付けた。このうちユーロ圏の支援は年末で終了することになっている。

ギリシャは支援を受けながら財政再建に取り組んだ結果、危機が沈静化し、国債発行によって自力で資金を調達できるようになっている。しかし、支援終了後の先行き不安が根強いことから、指標となる10年物国債はこのところ値下がりし、9月に5.6%まで縮小していた利回りは10月末に8.9%まで上昇した。

このため、ユーロ圏ではギリシャで金融支援終了後に信用不安が再燃し、自力での資金調達が難しくなる場合に備えて、安全弁として「予防的クレジット・ライン」と呼ばれる予防的融資枠の設定が必要との見方が強まっていた。万一の事態にユーロ圏が即応できる態勢を整えておくことで、投資家のギリシャに対する信頼感を高め、支援脱却後の危機再燃を防ぐ意図もある。ユーロ圏財務相会合のデイセルブルム議長(オランダ財務相)は会合後の記者会見で「ギリシャの市場が依然として脆弱で、財政再建で多くの課題があることを考慮し、予防的融資枠設定への強い支持があった」と述べた。

ギリシャ政府は当初、予防的融資枠の設置を避けたい考えだった。これによって支援脱却後も財政、予算が引き続きユーロ圏の監視下に置かれ、厳しい緊縮策の継続を迫られるためだ。ただ、これを拒否すると支援脱却が認められず、これまでと同様の厳しい監視を受けることもあって、受け入れに転じた。

債務・金融危機に陥り、ユーロ圏とIMFから金融支援を受けたユーロ圏5カ国では、アイルランド、スペイン、ポルトガルが支援を脱却済み。支援終了に伴い、予防的融資枠が設定されるのはギリシャが初めてとなる。

ユーロ圏は調整を進めた上で、予防的融資枠の設定を年内に正式決定する見込み。同融資枠はユーロ圏の金融安全網である「欧州安定メカニズム(ESM)」を活用することになる。