欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/12/15

EUその他

自動車事故自動通報システム「eコール」、18年3月から搭載義務化へ

この記事の要約

欧州議会の域内市場委員会はこのほど、EU域内で販売される新車を対象に、重大事故発生時に自動通報する「eコール」と呼ばれるシステムの搭載を義務付ける法案を賛成多数で承認した。EU加盟国と欧州議会は12月1日の調停委員会で法 […]

欧州議会の域内市場委員会はこのほど、EU域内で販売される新車を対象に、重大事故発生時に自動通報する「eコール」と呼ばれるシステムの搭載を義務付ける法案を賛成多数で承認した。EU加盟国と欧州議会は12月1日の調停委員会で法案の内容で合意しており、域内市場委はこれを追認した形。閣僚理事会の正式承認と欧州議会本会議での採択を経て、2018年3月31日から乗用車と軽商用車を対象に新ルールが導入される見通しだ。

eコールは衝突事故などが発生すると、車内に装備された発信装置が衝撃を感知して自動的に作動し、緊急サービスセンター(域内共通の112番)に車両のタイプ、使用燃料、位置情報などを通報する仕組み。緊急センターはこれらの情報を基に迅速かつ的確に救急隊を派遣することができ、従来に比べて事故発生から救助までの時間が大幅に短縮される。EU内では年間約2万8,000人が交通事故で命を失っているが、欧州委員会の試算によると、eコールの搭載を義務化することで救急対応に要する時間は農村部で約50%、都市部でも最大40%短縮され、交通事故による死者は年間2,500人ほど減少するとみられている。

欧州委は2005年にeコールの導入計画を打ち出し、当初は09年までに域内全域で同システムを実用化する目標を掲げていた。しかし、インフラ整備に要するコスト面の問題に加え、プライバシー保護の観点から加盟国間および加盟国と欧州議会の間で意見調整が難航し、これまでは各メーカーの自主的な取り組みに依存してきた。

加盟国と欧州議会は最終的に◇事故発生前にeコールシステムが搭載された車両からいかなる情報も収集しない◇緊急センターに自動通報された情報を本人の同意を得ずに第3者に転送しない◇収集した情報を完全に消去できるようにする――などの規定を追加することで合意。法案にはこのほか、新ルール導入から3年が経過した時点で、バスやトラックなどの新車にもeコールの搭載を義務づけるべきか検討することが盛り込まれている。