欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/4/27

EU産業・貿易

再保険規制に関する対米協議開始へ、加盟国が欧州委に交渉権限付与

この記事の要約

EU加盟国は21日開いた総務理事会で、再保険の規制制度に関するEU・米間の協議の交渉権限を欧州委員会に付与することで合意した。欧州委はEU全体の利益を代表して米国との交渉にあたり、欧州の再保険会社が米企業と同じ条件で競争 […]

EU加盟国は21日開いた総務理事会で、再保険の規制制度に関するEU・米間の協議の交渉権限を欧州委員会に付与することで合意した。欧州委はEU全体の利益を代表して米国との交渉にあたり、欧州の再保険会社が米企業と同じ条件で競争できる環境を整える。

EUと米国は2012年に保険分野における「対話プロジェクト」を開始し、監督・規制制度の比較や調和の可能性を探る取り組みを進めている。双方は健全な規制制度の確立や保険契約者の保護、保険会社の財務の安定にとって重要な7つの項目について検討することで合意しており、このうち再保険に関しては米国外の再保険会社に対する担保要件が焦点になっている。これは米国の保険会社が国外の再保険会社に出再する際、再保険会社は引受負債責任相応額の100%を担保として供出しなければならないという米国の規制で、EUや日本など米国外の保険業界は差別的な規制として撤廃を求めている。

全米保険長官会議(NAIC)はこうした動きを受け、11年に一定条件の下で再保険担保の減額を認めるモデル法(Model Law)を採択。ニューヨーク州やフロリダ州など一部の州ではNAICによる制度改革に先立って独自に規制緩和を実施しているが、米国では保険業界が州ごとに規制されているため、複数の州で事業展開したい国外の再保険会社にとっては依然として高い参入障壁が残っている。欧州委は米当局との交渉を通じ、すべての州で速やかに担保要件を見直すよう要請する。

EU議長国のレイルス財務相は、米国外の再保険会社に対する担保要件によってドイツのミュンヘン再保険やハノーバー再保険、英ロイズ保険組合などの欧州企業は追加的なコスト負担を強いられ、米企業との競争で不利な立場に置かれていると指摘。「米国との合意により再保険および関連する分野で欧米間の取引が大幅に促進される」と強調し、規制制度の調和に向けた具体的な取り組みとして、健全性規則の相互承認や当局間の情報交換などを挙げた。